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━━━気がつくと俺は灰色の世界にいた。
そこはモノクロの世界。
そこは無限に広がる灰色の世界。
そこは無数の灰色の人混みが蠢きあう世界。
私とゆう存在、ただその中を流されるままに身を任せ、ただ流されているそれだけの存在。
……いったいどれだけさ迷い続けただろうか……。
……わならない……。
……時間……とは?……考えるのは止めよう……頭が一杯で……何もかもどうでもいい……ただわかる……。
……向かう先……あの先にあるのは……闇……いや無か……。
体がどんどんと……はるか彼方にある闇の方へ、少しずつ吸い込まれていく……無だ。
ただの無になっていく……。
━━━ふと闇から一筋の小さな光が飛んできた。
光がこちらに近づくとあまりの眩しさに目を瞑るが、眩しい…なんて光なんだ。光に包まれる感じがする……なんだか心地よい温もりを感じる。
……光が止んだようなので目を開けてみれば。
━━━白い翼をはためかせた女性が近づいてきた。理想の女性らしさを強調する白い衣を纏い、ピンクプラチナブロンドの長い髪を靡かせた人知を越えたほどの絶世の美女が見つめてくる。煌めく青紫色の虹彩にどんどんと吸い込まれていく。
産まれた赤子が初めて認識する色はきっとこういう風に見えたのかもしれないと思わせる、それはそんな色だった。
……初めて見た優しくてこの世界で色のある存在、そんな彼女が白い手を差し伸べて、
「あなたはこっち」
と手を握る。
温もりが全身を駆け巡っていく。
彼女に手を引っ張られると、流れの外へと連れ出された。
……人混みの渦からどんどんと遠ざかっていく。
━━━その景色に唖然とする。
なんて所なんだ!
無数に流れる灰色の人混みの流れは渦となり、台風の目のような先へと吸い込まれていく、あのまま行ってたらやがてあの先にある無へと吸い込まれていたのかもかもしれない、だが不思議と恐怖はなかった。あの方と一つになれるのだから。なんとなく本能が告げる。あの先にあるのは……。
━━━遠ざかっていく景色、ふとあの闇の中からでた小さな炎が人を炎に包むと、やがて消え、色鮮やかな翼の生えた女性が流れの中から引っ張りだしてどこかへ飛んでいった。次は氷漬けにされた人が一瞬で溶け、天使に引っ張り出されどこかへと飛んで行く、今度は切り刻まれ、もとに戻った人が、天使に連れていかれようとしたところで気を失った。
「ミツケルカラ」
老若男女、複数の声が一つにまとまったような声、薄れ行く意識の中でそんな声を聞いた気がした。
……あの闇の中、こちらを覗く睛眸を見た気が……。
……。
……。
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