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 最近、友達に彼氏ができた。同じ部活で、傍から見ればただの友達にしか見えない関係。でもそんな二人の間には、透明マントで隠された恋情がある。  その子から報告を受けた時、心底驚いた。私は周りの感情や変化に敏感な方ではあるが、二人が恋愛関係に発展したことには気がつかなかった。案外自分がそう信じているだけで、恋愛に関しては実際は鈍感なのかもしれない。  いいな、と思った。彼氏ができました、と言われた時純粋に「いいな」と思った。彼氏という存在が欲しいと思っているからこそ、いいなと思ったのかもしれない。でもそれ以上に、きっと恋愛感情を抱くことができた彼女が羨ましかったのだと思う。  私は小学6年生の初恋以来、誰かを好きになった経験がない。大学1年生になった今、小学生の時の記憶や感情なんてすっかり忘れてしまった。だからもう、「好き」という感情を思い出せないのかもしれない。  人を愛するという気持ちが分からないまま死んでいくのかもしれない、と最近かなり深刻に考えている。愛を忘れたまま死ぬのは、嫌だ。でもそれが現実になりそうだ。  大学1年生だし、先はまだまだ長いんだから。そう大人は言うけれど、人生100年時代の今、その残された81年を物にできなければ、81年あっても意味がない。そう私は考えている。  眠る前も、一人でいる時も、暇な時も、気づけば考えることは愛と恋についてだった。きっとその思考は、自由研究や卒業論文なんかに換算してもおかしくないレベルだ。  愛とは何か、恋とは何か。どんなに恋愛漫画を読んでも、辞書で意味を調べても、敬愛する恋愛作家の小説を読んでも、映画を見ても、話を聞いても、これっぽっちも理解できた気にならなかった。  周りは簡単に誰かを好きだなと感じているのに、自分は欠陥品かのようにそれを感じることができない。悲しかった。  彼氏ができた、好きな人ができた、失恋した、結婚した、気になる人ができた。一体どうしたら私の口からその言葉を発することができるのだろう。そんな日は来るのだろうか。大学1年生がそろそろ終わる。それを認識した瞬間、毎夜繰り返し考えていた。
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