第1章・呪縛 5ー①

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第1章・呪縛 5ー①

「正室はコウジを据える事とする」 スウェイドは同時にアブドルを後継者に決定する事を公言した。 夕食の席での発表にクロエの悲鳴のような絶叫が轟いた。 「私は認めません!昨日今日連れて来た側室に……!それも男でございます!国民も認める筈がございません」 「国民が認めないなら、私が王になる前にアブドルを推挙するだけの事」 「スウェイド殿下!」 「逆らう事は許さぬ。それと、お前達のコウジに対する態度は、今後は正妃に対するものだという事を、十分わきまえるように」 マライカは顔を上げる事も出来ずに震えている。 リエカは満面の笑顔で手を叩いた。 「まぁ!おめでとうございます!スウェイド様、コウジは素晴らしい方でございますよ。何よりもお優しい。私も精一杯、お手伝いさせて頂きますね」 「リエカ。コウジは王族の事も、しきたりも何も知らぬ。色々と教えてやってくれ」 光司は不安で一杯になっていた。 正妃に……という話は夕食の直前に聞いたが、光司が激しく拒絶すると、スウェイドとリエカから説得と言う名の洗脳が始まった。 正直、今も気持ちの整理がついていない。 正妃として振る舞えるか、自分か公人に相応しいのか、男の自分が側室達と上手くやっていけるのか、問題はあちこちに山積していた。 何より、自分が孤児である事、そして、日本での会った事もない親族の存在が、何よりも光司を不安にさせていた。 アッシュが日本での事は調べていると言っていたが、父母が日本には居られない何か理由があったのではないかと思うと、真実を知るのが怖い。 そして、強引なスウェイドに引き摺られている自分がいる。 スウェイドに惹かれている訳ではない。 スウェイド自身も、光司をただの目新しい玩具位にしか思っていないのではないだろうか。 二人の間にある関係が、あまりにも希薄過ぎる。 しかし、宮殿という特殊な場所である事が、それを言うには憚られる空気があった。
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