第1章・呪縛 4ー②

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第1章・呪縛 4ー②

「指輪は無くさないように、ネックレスで通して、首に下げておいて下さい」 アッシュが金の細い鎖に母の形見を通し、光司の首に掛けてくれた。 「それと、ご忠告させて頂きますね」 「え?俺、何か悪さした?」 悪さしたのはスウェイド様です……と、心の中で呟きながら首を振った。 「先日、お会いになられた、従兄弟のザイール様ですが……大変、問題のある方でして」 「え~?また、要注意人物~?」 光司は眉間にシワを寄せ、心底嫌そうな顔をした。 「とにかく、スウェイド様を敵視しておられて、スウェイド様の物は何でも欲しがる方でして。リエカ様にも求婚されて、誘拐騒ぎになった事もありまして」 「そんなに凄いなら、スウェイドのハーレムを全部欲しいとか言うんじゃないの?」 「これがその辺りは異常に嗅覚の優れた方で、スウェイド様の本当に大切な物だけを欲しがる困った方なのです」 スウェイドのハーレムは大事じゃないのだろうか。 国中の美女を集めていると噂のハーレムだ。 「スウェイド様はある意味、女性嫌いで、ただの性欲処理としか思われておられません。ですから他の奥方様方より、貴方の方が危ないんです」 「よく分かんねーけど、ザイール様には近寄っちゃいけねーんだな?アッシュの人を見る目は確実だから、信用する。ザィール様が来たら、ダッシュ!な!」 走るポーズをする光司に、アッシュは微笑んだ。 光司は本当に愛らしい。 飾らない姿も、慈愛に満ちた行動も、口は悪いが、正妃に相応しい。 男ではあるが。 他の側室達の問題がなければアッシュも言う事がないのだが、こうなると何が最善策か分からなくなってきた。 オマケにザイールまで湧いて出るとは思わなかった。 ザイールと話した時と、スウェイドからの話からすると、このままで済むとは思えない。 光司を鍵のかかる箱に隠して下さいと、スウェイドに進言したくなる。 前のリエカの時も国中のスキャンダルになる寸前だった。 ザイールに襲われたリエカは、その貞操を奪われる前に自害しようとしたのだ。 流石にあの時は、国王から事実上の島流しを一年間食らったザイールだった。 しかし、あれでも懲りてなさそうだと、光司の更なる強固な警護を増員した。 これから、アッシュの胃炎は治る時が来るのだろうか。 アッシュが胃を押さえると、「腹、下してんの?」と心配そうに覗き込んでくる光司にだけは、心配はかけたくなかった。 ザイールが光司を狙っている。 その執拗さだけは、子供の頃から痛い程に感じていた。 何故、あんなにもスウェイドに対抗意識を持つのか。 光司に対するあの反応は、リエカに会った時以上だったように思う。 それを制する為にも、早々に光司へ正室としての教育し、式を挙げ、皆に知らしめる。 今夜の夕食では、他の側室達にも文句を言わせるつもりもなかった。 スウェイドの本心は、もう揺らぐ事がなかった。
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