第1章・呪縛 5ー②

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第1章・呪縛 5ー②

部屋に戻り一息つくと、スウェイドは先程の自分を振り返って不思議に思った。 光司を正室に迎える事を喜んでくれるリエカに対して、何の感情も湧いていない自分がいた。 以前のリエカへの焦がれる気持ちは何だったのか。 あれ程に、欲して止まなかった女を、こんなに簡単に気持ちの整理をつけてしまえる事に、自分自身、理解出来ないでいた。 どうせ手に入らぬ女だからと、諦めも付いたのだろうか。 「熱い!熱い!」と風呂場から叫びつつ、光司が出てきた。 白い肌がほんのりピンクに染まっていて、スウェイドの劣情をそそる。 すぐさま押し倒して、己が欲望のままに突き上げたくなる衝動を、抑えるのに必死だった。 これからしばらくは、焦らずにゆっくりと、花を育てるように愛でるつもりだった。 自分好みに育った光司はどんなだろう、と想像すると半身が熱くたぎろうとするが、今度は失敗するつもりはない。 もう最初の時のように、痛みしか感じないセックスをしようとは思わなかった。 風呂から上がった光司は、ベッドに腰掛けていたスウェイドに手招きされて隣に座ろうとすると、その手を引かれ、正面から跨ぐように膝上に座らされる。 開いた足からバスローブの前もはだけ、慌てて直そうとする光司の手を取り上げて、自分の後ろ首に回させた。 スウェイドは光司の首から提げられている指輪を掴んだ。 「日本人には名前の漢字には意味があるのだろう?お前の名前の意味は何だ?」 「光を司る(ひかりをつかさどる)って書いて、コウジって読むんだ。草下は……草の下(くさのした)だな」 「光を司るか。……良い名だな」 膝上に乗せても、まだ自分より下にある顔に、チュッと音のするキスをする。 それだけで光司の顔は真っ赤に染まった。 「この指輪は、特注で作らせた高価な物のようだ。裏の文字も分析したら何か分かるかも知れない。お前の両親の事は近い内に調べがつくだろうが……」 「スウェイド……、もしも、俺が……」 「もしもお前が、たとえ罪人の子でも、正室にする事には変わりはない」 スウェイドは光司の不安を察していた。 急に、光司は初めて会った時の事を思い出して、笑った。 「罪人は罰せねばならん……て言ったのはあんたなのに」 「そうだったな」 スウェイドは光司の背中に手を回して抱え上げ、ゆっくりとベッドに下ろした。 「では、お前の罰は今から償ってもらおうか……」 「痛いのは……嫌だ……」 「痛くはしない。セックスがどれ程に気持ちが良いか、教えてやる。お前が私にしか感じられない、特別な体にしてやる」 「だから、何でそう、無駄にエロいんだよ、あんたは……」 これ以上、言葉はいらないと、言うかのように、スウェイドは光司の唇を塞いだ。 深い、深いキスは、お互いの口と口から溶け合うように絡み合う。 スウェイドの舌の動きについていけない光司は、されるがままにその口内を差し出してねぶられた。 唇の角度を何度も変え、あらゆる方向から攻めてくるスウェイドの舌を受け止める。 そのまま舌は、やがて下へ下へと降りていき、全身のあらゆる所を口付け、舐め、噛んだ。 特に光司の反応の良い場所には、食らい付くようにしてねぶる。 その淫らさはキスとは段違いだった。 この間の交わりとはまるで違う、それはまるで別物のようだった。 腰から拡がる快感は、まるで電気が走るように、足先や手先にまでビリビリと痺れさせる。 頭の中が沸騰して、何も考えられない。 それから、光司は何度も気を失うも許されず、明け方近くまで達かされ続けた。 それからは毎晩のように、ベッドには甘やかな声が満ちていた。 日に日に淫らになっていく自分の体に、光司は感情が追い付かない。 スウェイドの優しくも執拗な手管に翻弄されて、自分の気持ちの在り様が分からなくなる。 ベッドでのスウェイドは、決して引いてはくれない。 スウェイドのそれは、『愛撫』という名の『調教』だった。
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