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第1章・呪縛 2ー②
寝室に戻ると、沈黙が辺りを充たした。
光司は居たたまれない気持ちだったが、聞かずにはいられなかった。
「リエカさん、何で正室になってくれねーの?」
「リエカは兄上の正室だった。兄上が病死した後、私の側室にした。エレナイとアブドルは兄上の子だ」
光司は息を飲んだ。
「私はずっとリエカを愛していたが、リエカは心優しい兄上を選んだ。だが、兄上は体も弱かったから、病に打ち勝つ事が出来ずに亡くなった。いつまでも気が変わるまで待つと言っていたが……もう、駄目だな」
スウェイドはベッドに腰掛け、組んだ手を額に押し当てた。
スウェイドはリエカを愛している。
リエカがスウェイドを愛せない事が悲しかった。
どうしようもない現実だけが残る。
「あの……いつか、あんたに、リエカさんより好きな女の人が現れたらいいな。……ゴメン……。慰めにもなんねーか」
「お前が私を慰めてはくれないのか?」
そう言って、スウェイドが熱っぽい目で見つめてくる。
その視線に、光司は今、側室である自分の地位と、ここが寝室である現実に思い至って、竦み上がった。
「やっ……。俺、男だから!女みてーな事は出来ねーし!」
焦る光司を、スウェイドが引き寄せ、膝の上へ横座りに乗せた。
相当に差のある二人の体格は、端から見たら、まるで大人が子供をあやしているようにも見えた。
「男でも、男を悦ばせる事が出来るのを知らないのか?」
「えっ?ウソっ!そんな……俺、無理だよっ……」
言いかけた光司の唇を、スウェイドの唇が塞いだ。
「私を慰めてくれ……コウジ」
スウェイドは服の上から光司をまさぐった。
「ダメだっ!俺には出来ないっ!……イヤだっ!」
「初めてか?コウジ。お前は貧しくても体を売る仕事はしてなかったのか」
「俺、そんなのっ……」
光司は、今まで誰にもそんな目で見られた事がなかったし、性的に成長の遅い体も、欲に餓える事もなかった。
スウェイドを好きか嫌いかと言う以前に、昨日会ったばかりの二人だ。
何の感情も湧いていない。
それ以上に、リエカを愛しているスウェイドを慰める為に抱かれるなんて、まるで性欲処理の商売女のようで嫌だった。
膝上で暴れる光司を、大柄なスウェイドは難なく押さえ込み、器用に上着のボタンを開いていく。
それに逆らって、スウェイドを引き離そうとすると、その頭のクフィーヤが床へと落ちた。
それでもスウェイドは舌と唇での愛撫を止める事はなく、巧みにコウジの下衣をはだけさせた。
「初物は、久しぶりだな」
スウェイドは真っ赤になっている光司の唇に深いキスをした。
口内に差し込まれた舌は、何かを探すかのように中を動き回り、蹂躙する。
舌の横を舐め上げ、絡め、光司の唇の端からは、溢れ出た唾液が流れ落ちた。
キスを嫌がる光司を横抱きにして、ベッドへ寝かせようとすると、その瞬間を逃さず、スウェイドの腕からすり抜ける。
だが、脱げかけの下衣が邪魔をして足を取られ、難なくスウェイドに捕まってしまった。
「私から逃げられると思ったか」
スウェイドは光司の服を引き千切った。
「私を拒絶する事は許さん」
「リエカさんにも……そう、言ったのかっ……」
光司の言葉はスウェイドの胸を引き裂いた。
リエカの事は、もう言われたくない。
憤怒がスウェイドの中に満ち、爆発した。
光司の体を俯せに押さえ付けると、自身のベルトの紐で手首を一纏めに括り付けた。
足はスウェイドの両膝が縫い止めている。
光司は俯せのまま、動けなくなった。
焦れたスウェイドは、その腰を抱え上げ、自らの怒張で一気に秘孔を貫いた。
光司はその瞬間、死んでしまうと思った。
この世にこんなに辛い痛みがあるのか。
体が真っ二つに引き裂かれるような激痛で、息も出来ない。
そうして地獄のような苦しみが続き、スウェイドが満たされた時には、もう光司の意識はなかった。
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