第1章・呪縛 3ー③

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第1章・呪縛 3ー③

「スウェイドが午後の仕事を僕に任せるって?」 執事からの連絡にザイールは眉を寄せた。 クラシックは嫌いではないが、演奏後のデートのお楽しみがあるからこそ楽しめるものであって、それが仕事なら興味が半減する。 スウェイドの従兄弟のザイールは、享楽的な人間だった。 優男の風貌を持つザイールは、その甘いマスクで数多の女性と浮き名を流していた。 何でも楽しければ良いという世の中をなめた所があったが、小さい頃から歳の近いスウェイドとは、比べられる事が多くて、それだけは何にでも対抗心を燃やし熱くなった。 リエカに求愛していると聞くと、自分もリエカに求愛した。 何をしても相手にもしないスウェイドの、何の反応もないのが余計に腹が立った。 「何で僕に振るの?」 「新しい側室様の具合が優れないようでいらっしゃって」 「新しい側室?いつ来たの?綺麗な子?」 「最近の事のようで、そこまでは分かりかねます」 引き受ける前に、どうやらお気に入りらしい その新しい側室とやらを拝見してみたい。 ザイールは、新しい玩具を見つけたような気持ちに、心踊った。 鎮痛剤を医師に処方され、それを飲むと光司は深い眠りについた。 宮殿付きの医師には、光司とスウェイドの体格差を考えて、セックスは無理をさせないように釘をさされてしまった。 スウェイドが近くに寄ると、毛を逆立てた猫のように拒絶する。 自業自得かもしれないが、思った以上にショックな自分がいた。 思わず溜め息をつくと、バルコニーからカタンと音がしたので、見ると双子がこちらを覗いていた。 「やだっ!何で父上が?今はお仕事中の筈なのに!」 「エレナイ~!だからここからコッソリ入るのはマズイって……」 「……お前達……どうやってここまで入った?」 スウェイドに見つかって観念した二人は、正直に白状させられた。 「壁の人を伝って……」 「あの彫刻の上をか?危ないだろう」 だってコウジに会いたかったから……そう言ってシュンと項垂れる二人に、スウェイドは頭を撫でた。 「あそこは危ないから、バルコニーから来るのは禁止だ。コウジには遊んで貰えるように約束しておくから、時間になったら、ちゃんと扉からこの部屋に来い。今日はコウジも寝ているから、また明日にしろ」 父からの了承を得て、飛び上がって喜ぶ双子をスウェイドは両脇に抱えて退出した。 今日は夕方のテレビインタビューまで時間がある。 スウェイドは光司の代わりに双子と遊んでやる事にした。
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