総務部 竹花茂太 35歳

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総務部 竹花茂太 35歳

 スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」を見た。長くて、壮大で、映像を見ているのに詩を読んでいるような気分になる映画だったけど、HAL 9000というキャラクターを知られただけで見て良かったと思えた。  HAL 9000は宇宙船に搭載されたものすごく頭の良い人工知能で、乗組員が自分に疑いを持ったことを唇の動きだけで察知し亡きものにしようとする。最後に生き残った乗組員によってひとつずつユニットを取り外されるのだが、その時HAL 9000の放った言葉が「怖い」だった。少しずつ思考回路を奪われるのが彼にとって恐怖だったのだ。  人工知能に果たして感情はあるのだろうか。感情があるフリをして乗組員の行動を止めようとしただけなのだろうか。ぼくは人工知能にも感情はあって欲しいと思う。だって、そうじゃなかったら、今ぼくの下で性感帯を刺激されて善がる彼の喘ぎ声まで嘘になってしまう気がしたから。  彼はロボットじゃない。人工知能を搭載しているわけでもない。でも付いたあだ名は「マシーン」だ。多分社員の中には彼が本当に機械の体なのだと思っている人もいると思う。触ってみればわかるんだけどな。まあ、「マシーン」の所以はなんとなくわかる。こんなにエロい身体、作りものじゃなければ何なんだとも思う。
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