特殊業務部 嶺岸好芽 24歳

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 昔から真面目なことだけが取り柄だった。大人の言うことをきちんと守って世間のルールに則って生きてきた。三塚みたいな奴に疎まれるのにも慣れた。この企業に採用されたことはすごく嬉しかった。特殊業務部への配属は正直自分には荷が重いと思ったが頑張ろうと思った。早く周りに追い付こうと努力した。この作業を手伝うのも早く仕事を覚えるためだった。最初の方は。  初めて会った時から、社長は格好いい人だなとは思っていた。頭が良くて、落ち着いていて、何も恐れない。自分もそういう人間になりたい、という憧れの対象だった。彼の身体が欲しくなる時が来るなんて思ってもみなかった。そして、それが彼に受け入れてもらえるなんてことも。俺の人生初めてのセックスは社長とで、未だに彼以外とはしていない。  切り取った肉を箱に詰めて小荷物専用昇降機に乗せ地下の冷蔵施設に送った。昇降機がこの倉庫にあるから社長はわざわざここで解体作業をするのだ。社長はタオルで適当に体を拭いてブルーシートに汚れたものを全部まとめた。それから俺を見て「シャワー浴びてくるけど嶺岸君はどうする」と言った。答えなんて決まっている。「俺も行きます」と小さく頷いた。
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