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シャワールームは社屋の中にあって、市民プールなんかによくあるようなカーテンの付いた狭いスペースがいくつかならんでいるだけの簡素な作りの場所だ。利用する社員もそこまで多くはなく、繁忙期で残業を強いられている人とか、特殊業務部が外の仕事で土に塗れて戻って来た時とか、それぐらいしか使っているのを見たことがない。
スペースはひとつひとつ壁で仕切られている。隣に誰がいようと迷惑になることはない。それなのに俺は社長の使っている所からひとつ飛ばしたスペースに入った。ふたつ先の水音をやけに意識してしまう。ぼーっとしていたら音が止んで俺も慌てて体を流した。
「なんでひとつ飛ばすの」
思わず「わあ」と声が出た。振り向くとカーテンを少し開けて顔だけをこちらに突っ込む社長がいた。ニヤリと笑うと「シャイニング」と呟き首を抜いてカーテンを閉めた。俺あの映画見たことないんだよな。シャワーの栓を捻って止めると再びカーテンが開いて社長が入って来た。俺の股間を見遣り納得したように頷く。
「すみません」咄嗟にその言葉が出た。「社長を手伝いたかったのは本当なんですけど、その」
「別にいい。そうなんだろうなと思った」
「ごめんなさい。こんなことばっか考えてて」
「相手がいるうちにやっとくもんだよこういうのは」
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