特殊業務部、オオトモボディサービス 三塚証、三塚祝 27歳

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「へえ」 「貸そうか」 「いいよ。ふたりで使えば」  バラバラにできない玩具は代わり番こ。これが僕らのルールだ。でも一緒に遊んだらもっと楽しいかもしれない。そう思った。  二週間ぶりに会った。どちらも仕事が終わったばかりなので片方はグレーの作業ツナギを着ていて、もう片方はワイシャツとスラックスにカーディガンという出で立ちだった。僕らは特に何か話し合ったわけでもなくコンビニに入りお互いの気分を確認するでもなく酒とツマミをふたり分籠に放り込んでいく。ただ、今日はふたりだけで過ごすわけではないので僕らは一旦顔を見合わせた。 「社長の分どうする?」 「いいよ。どうせそんな飲まないし食わないだろ」  僕らはお互いのことはよくわかる。考えていることは大体同じだし何も言わなくても上手い具合に擦り合わせができる。だが他の人間のことになるとわからない。それも僕らにとってはあまり気にすることではない。  社長の自宅は新興住宅地にある小綺麗なマンションの一室だ。この町では一番家賃の高いマンションではあるが、所詮は田んぼに囲まれた田舎町の話。もっと都会に行けばいかにも会社の社長が住みそうな所なんていくらでもある。通えないこともないんだし仙台の高級マンションとか買っちゃえばいいのに。こんなド田舎に執着する理由がわからない。
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