特殊業務部、オオトモボディサービス 三塚証、三塚祝 27歳

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 流石にマンションはオートロックで、ロビーで住人とやり取りをしてから部屋に向かうシステムだ。僕らは最近あったことを話しながらダラダラとエレベーターに乗り廊下を歩き部屋に入った。いつもと同じような格好の社長に迎え入れられた。  社長の部屋を見てみたい、と言ったのは僕らの方だ。だが本人曰くここ数年は社屋に泊まり込むことが多くマンションに帰るのも一週間に一度くらいなのだという。僕らは社長に許可なく玄関のシューズボックスを開け洗面所と風呂場を覗きドアというドアを開けて中を確認した。ひとつ、キッチリとカーテンの閉められた室内に布団のないベッドやら椅子やら靴やらが詰め込まれた部屋があったので、僕らは顔を見合わせてから黙ってドアを閉めた。社長も黙っていた。それから僕らは部屋を勝手に覗くのを辞めた。彼があの奇妙な部屋について何も言わなかったことに却って僕らのふざけたくなる気持ちが押さえつけられた。 「こんないい部屋ほとんど使わないのもったいないっすね」と僕らは言いながら缶チューハイを開けた。お互いの手元から同じタイミングで炭酸の抜ける音がした。僕らはふたり掛けのソファに座って、社長は床に座り込んで僕らが酒を飲むのを見ている。さっきの部屋から椅子取ってくればいいのに、と僕らは思ったが口には出さなかった。
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