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「無理はしてない」俺は言って嶺岸に背を向けた。鉈を自分のデスクに置き回ってきた文書を確認する。ひとつ気になるデータがあったので事務室を出た。管理部の事務室へ行きデスクが4つ程くっつけられた小さな島のようなスペースに座る男性に声を掛けた。「端正」という単語がピッタリの顔立ちだ。切れ長の目にクッキリした瞳と高い鼻。頭が小さく座っていてもスタイルの良さがわかる。亀卦川琉河という名前がもう既にイケメンだ。今日もビジュいいね、と心の中だけで呼び掛けた。
「社長」と亀卦川が呟く。「文書に不備でもありましたか」
「不備とかじゃない。詳しく話を聞きたい」
俺は亀卦川の端末を勝手に弄って文書データを開いた。県から送られてきたデータ。件名は「国指定哺乳類型人工生命体の早期退職について」だ。
「どういう経緯でこうなったのか教えて欲しい」
「それは私にもわかりません。ただ一身上の都合により先週付けで早期退職をしたとだけ」
「時期が変だし何かトラブルがあったんじゃないかと思う」
「トラブルに巻き込まれたのかトラブルを起こしたのか、どちらも可能性ありそうですけど」亀卦川が小馬鹿にしたように鼻から息を吐いた。
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