県指定普通哺乳類型人工生命体 2063年式 2012年デザイン 耐久時間不明 生殖機能有

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 彼の所属は管理部の人工生命体管理室。怪奇種の処理を人工生命体に頼っていた時代には人工生命体管理課として運営されていたが、ヒトによる処理が推奨されたことにより規模が縮小された。今の主な業務は怪奇種の処理という役目を終えた人工生命体達のその後の生活を把握し支援することだ。そして、この人工生命体管理室は2年後には解散する予定になっている。  大概の人工生命体は見た目はヒトと変わらないしヒトにできて人工生命にできないことはないので、それなりに社会に馴染んだ生活を送れるが、なかなか定職に着けなかったり人間関係が良くない者もいるにはいる。俺はデータを見ながら「うちで面倒見ようかな」と呟いた。 「他人の面倒より自分のことを気にした方が良いのでは」と亀卦川が端末をサッと操作し表示したのは俺の医療費明細だ。「薬の量が昨年度より増えています」 「今年度は大雨もあったし台風も来た。低気圧駄目なんだ」 「薬はラムネ菓子みたいに食うもんじゃないです」 「体調悪いままだと怪奇種の処理にも支障が出る」 「これ以上社長の薬代に予算は増やせません。その上クビになった人工生命体の面倒まで見るんですか」  正論。俺は押し黙った。それから「考える」と言って踵を返した。本当は考えられる程頭が回らなかったのだが。特殊業務部に戻りデスクの前に座るとすぐに嶺岸が近付いて来た。 「大丈夫ですか」 「大丈夫」
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