第4話 こどもの時間

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尋海と万里が作った昼食をみんなで食べ、食後にカルタをし、3時のおやつに尋海特製のチーズケーキを食べた。 おやつ後、矢吹はしぶしぶ病院に戻って行き、4時になると紫織と尋海が出勤の準備をするため自室に帰って行った。 リビングにふたりきりになると駿が万里に言う。 「さっきのカルタ、大人たちがジャマして全然練習にならなかったな」 駿の言葉に万里は笑顔を見せる。 『でも尋海ちゃんのカルタ、すごくおもしろかった』 万里がスマホの読み上げ機能を使ってそう言うと駿は大きく頷いた。 「たしかに」 そのあとふたりはリビングの絨毯の上に図書館で借りてきた絵本を広げた。 「ちひろはそのき……き……これ、なに?」 絵本にかかれた一文を指差して駿が万里を見る。 『きょうりゅう』 万里がスマホでそう答えると、駿は頷いて朗読を続けた。 「ちひろは、そのきょうりゅうの……せ……なかに……」 たどたどしいながらも一生懸命読んでくれる、駿の絵本の朗読が万里は大好きだ。 「ふたりは……よぞらに、ちらばるほしを……」 駿は早く文字を読めるようになって香坂青以の本を読みたいと言った。 青以は目を丸くして驚いたあと、あのカルタを作ってくれた。 早く大きくなって、難しい漢字も読めるようになりたい。 紫織にやられっぱなしじゃなく、少しでも技を返せるようになりたい。 強くなりたい。 母親を守れるくらいに。 万里を、守れるくらいに。 賢くなりたい。 大人に負けないくらいに。 片親だからって馬鹿にされないように。 駿は小さな体と頭をフルに使って様々なことを吸収していった。 今まで母親とふたりきりで過ごし、他者と触れ合うことなく閉じこもっていた世界が、このマンションに引っ越してきて一気に開いた。
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