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第1話 彷徨う瞳
朝起きたらベランダから見える空を写真に撮り、草花に水をやる。
そして希和の部屋で土鍋ご飯と朝食の用意をして、管理人室で3人で食べる。
朝食が済んだら雪村と一緒にマンションの掃除とパトロールをし、そのあとは希和から華道、茶道、琴、着付け、礼儀作法などを習う。
高松に行くまではそれが万里の日課だったが、母親の死ですべてが一変してしまった。
万里は笑わず、泣かず、喋らず、食べなくなった。
1日のほとんどを眠ったまま過ごし、夜、少し目を離すとベッドから起き出してフラフラと歩き回る。
外に出て行ってしまわないよう、青以は万里を膝枕したままパソコンに向かい、執筆をした。
寝る時は腕の中に万里を抱きしめて眠った。
万里は母、千里を亡くしたが、青以にとっての千里は単なる姉ではなく、双子のようでもあり、母が亡くなってからは母親代わりでもあった。
そして、それと同時に恋焦がれる存在でもあった。
ふたりは実の姉弟でありながら惹かれ合ってしまうことに苦しんだが、実は千里は養女で血の繋がりはなかったことを知る。
想いを伝え合い、気持ちを確かめ合った直後に千里は逝ってしまった。
青以は大きな喪失感に襲われたが、それよりも万里まで失うかもしれない恐怖の方が勝った。
何より、亡くなる間際にした千里との約束と、万里との誓いを果たすため、青以はどんなに苦しくても書くことはやめなかった。
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