震える漫才師

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♬.•♬.•*¨*•.¸¸♬.•♬.•*¨*•.¸¸♬.•♬ 「どうもー! どうもどうもーっ!」 「どもー」 「『ブルー・ブルー』でーす。よろしくおねがいしますっ。こっちのイケメンが青原(あおはら)で、そっちのべっぴんさんが――?」 「……はぁ。青色吐息(あおいろといき)です。青い二人です」 「はいっ。青原と青色吐息。青い二人で、ブルー・ブルー。覚えやすいでしょう? 今日はこの名前だけでも憶えて帰ってくださいねぇ」 「青い二人です」 「そうなんですよぉ」 「青い二人です」 「……吐息さん?」 「青い二人です」 「あのー。もしもーし」 「青い二人です」 「いや、もういいから!」 「どうもありがとうございましたぁ」 「じゃなくてっ! 漫才終わらないから、これからだから! なに、もう終わりたいんですか?」 「もっとやりたい」 「でしょう? やりましょうよ」 「青い二人です」 「そっちかい! 吐息さんお願いですから、漫才をやりましょうよ……」 「お願い。あと一個だけ言わせて。言いたくて言いたくて震える」 「どこかの歌手みたいなこと言い出した。もうしょうがないなぁ。あと一回だけですよ?」 「ありがとう。……ごほん。んんっんんっ」 「吐息さん、入念に喉を整えております。これは最後に渾身(こんしん)の一回が聞けそうですよ。楽しみですねぇ、皆さん」 「なーなーなー。ドッミファッソシードー」 「音程は関係あるかなぁ? 関係ないと思うなぁ」 「ぷるるるる、とるるるる」 「あー、あのなんていうか、唇をプルプルさせる歌手のウォーミングアップみたいなやつ」 「リップロールね」 「いいから早くしてくださいね?」 「実はウチら、付き合ってます」
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