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63 赤い光
「ドォルドー国の皆さん聞こえてますかー」
ミラノにお願いして「拡声球」を数十個以上、上空へ浮かべ風に乗せて北方へ運ぶ。2時間後、ドォルドー国上空へ散った拡声球を通して私の声が国中に鳴り響いていることだろう。
「いきなり最終警告です。ただちに軍を自国へ引っ込めてください」
明日の晩までと猶予を与えたうえで、もし侵略を続けるならドォルドー国に次の日は来ないよ、と脅した。
これでも親切に通告してあげたつもりだったが、通告したその夜に襲撃を受けた。
「ドォルドー国万歳! カーマイン将軍万歳!」
そう言いながら、無謀ともいえる突撃を繰り返してくる。
独裁主義の弊害がもたらす国民への徹底的な洗脳……これはアカン。
私たち地底帰還組はすでに地上では敵なし。私以外のメンバーも一人ひとりが英雄と呼んでも過言ではないレベルに達しているので、彼我の差を見せつけ戦意を挫こうとしたが、まったく怯んでくれない。
連中が、亜人国プーアンやエブラハイム国の軍を圧倒している理由は以前エブラハイム王国で保管してあったマントラという爆薬を大量に奪われたせい……だけどこちらへ爆薬が投げ込まれる前に遠隔魔法の嵐で叩きまくるので、これまで彼らが使っていた戦法は私たちには通じない。
朝方まで戦闘が続き、終わったかと思ったら、オポトの元同僚、アド20という高度な暗殺術を叩き込まれた者たち複数人が野営地に潜り込みレオナード皇子を暗殺しようとした。だけどオポトが全員片付けてくれた。手を汚させてしまった。アド20の子たちだってきっと洗脳されていたに違いない。──無性に腹が立つ。
「ドォルドー国の皆さん私は怒ってます」
昨日と同じく「拡声球」で死にたくなければ国外へ明日の朝……陽が昇るまでに避難するよう通告した。
夜中に予想通り、夜襲があったので手加減なしで対応する。
そして、迎えた次の日の朝、日の出とともに雷霆を発動した。
赤い光が天空から落ちてきて、ドォルドー国首都とその一帯が地図から消えた。首都から離れた村などは助かっただろうが中心地で逃げなかったものはまず何が起きたのかさえ、わからなかっただろう。
この赤い光は神話が描かれた書物で似たような神の雷と呼ばれる古代人を滅ぼしたとされるチカラに酷似している。
戦い方を変える。残った前線にいる連中を叩くため、賢者アールグレイにお願いしてこちらもマントラを大量に作った。このマントラなる爆薬は数百年以上前に作ることが禁止されたことから現在、その製造法を知る者がなく、王都デルタの倉庫に保管されていたものがすべてだった。
亜空間魔法魔女の大鍋にマントラを大量に積み込んで上空へ飛び立った。連中も地上から魔法で私を撃ち落とそうとしたり、空を飛んで空中戦を仕掛けようとしてくるが、私は魔法使いの限界高度と言われてる高さ以上に上昇して、そこから一斉に投下した。
この戦いは「ドォルドーの赤い光」と呼ばれ、マントラという爆薬が他大陸にも広く知れ渡るきっかけとなった。
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