64 けじめ

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「なんだ親父、急に呼びだして」 「きたか」 翌日、王都ベルルクにいる父親から連絡があり、魔法のチャリで引き返してきた。 王都を名乗っているが、ベルルクの街は暗い空気に包まれていた。とてもではないが、国土を奪った側とは思えない 「レオナード皇子の件は聞いているな?」 レオナード・デマンティウス、エブラハイム魔法王国の第1皇子でパルミッツ学院では同学年で何度か一緒に遊んだ仲だが、正直気に入らない男だった。 ヤツは父王が討たれる前の日、シリカの手によって亡命しやがった。よりにもよってシリカと一緒にだ。今ごろどこかでアイツとシリカが仲良くやってるかと思うと頭がおかしくなりそうになる。 「そこでお前に頼みがある」 やっぱコイツは俺と同じでクズだわ。 レオナード皇子とその周辺の人物に効果的な人質を選ぶよう頼んできた。 レオナードは歳の離れた妹がいて、他に遠縁で同じパルミッツ高等学院3年に在籍していたアンナ・テルバトスという高慢ちきな女も捕虜として捕らえているので、このふたりが妥当だろう。 ロニ・ゴットフリート家には目ぼしい人質がおらず、オポトという俺を暗殺しようとしたヤツはエブラハイム国の出自ですらない。エマと言う女はシリカにくっついている雑魚だから無視していいだろう。残すはサラサ・ボールドマンとシリカ・ランバートのふたり……。 サラサはそもそも姉のテレハがテイラー家で働いているので、人質としてすぐに使えるが問題はシリカの両親と弟の3人の方だ。 親父はその昔、シリカが猫を被っていたから知らないのだろう。ドォルドー国の首都が一夜で消え失せ、大軍を全滅させたのも、アイツの仕業以外に考えられない。 下手に刺激をしたら、ベルルクの街もこの一帯も地図から消えるかもな。
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