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67 ボールドマンの家系
「よお親父、どこへ行くんだ?」
「……キャム、前線で捕まったお前がなぜここに?」
質問を質問で返す。まあ、俺も答えないからお互い様なんだが……。城の裏門から少数の兵を連れて馬車に金目のものを積んでトンズラしようとしているのがバレバレな親父を呼び止めた。
ベルルクの街はあちこちで火の手が上がっている。まだエブラハイム軍はデルタ湖の近くにいるはずだからここへ到着するのは数日はかかる。おそらく町の人間が暴動を起こしたんだろう。
やりたいことを散々やって自分の身が危なくなったら自分だけバックレるってか……まるで前世の俺じゃんw
「そうだキャム! お前の魔法で暴動を起こしている連中を始末してきてくれ、お前なら簡単だろう、な?」
その間に自分はここから北へ行ったところにある港からこの大陸を出るってか? 笑えるなコイツ。
「親父、悪役貴族ってのは、ちゃんと最後は酷い目に遭わないと終わらないモンなんだぜ?」
「キャム、お前……何を言っている?」
理解できないか? 所詮はただのモブキャラだしな。
「──ッ!? き、貴様ぁぁぁ!」
炎の魔法で、馬車の車輪を壊す。途端に悪役親父は顔を真っ赤にし兵士へ命じた……キャムを殺せ、と。
お前らみたいな雑魚に●られるワケないだろ。10人くらいいるが、炎の魔法を駆使して焼いていく。
「うわぁぁぁッ」
兵士のひとりを炎を纏った手で顔面を焼きながら持ち上げていた。──ドンッと鈍い音がしたので、自分の胸元を見ると服に黒い穴が開いており、そこから真っ赤な鮮血が広がっていく。
「ごふッ……この……糞じじぃが」
ヤツが手に持っているのは前世で見たことがある。拳銃にそっくりな魔法の武器……そんなモンどこにあったんだよ?
「まったく、大事な秘密兵器をムダに使わせおって、この出来損ないが、とっとと死ね!」
うつ伏せに倒れた俺に近づきながら、拳銃のような武器で何発も俺を撃っているが、興奮しているのか1発だけ左腕に当たっただけで全部、外れていった。
「き、貴様、放せぇぇ!?」
「ばーか、道連れだ。この腐れ外道が」
冷たくなり始めた手足を無理やり動かし、父親役を演じたクソつまらん男に抱きつき、ありったけの魔力を込めて己を発火させた。
──悪ぃな、シリカ。赤ん坊のことだけは謝る。これでチャラにしてくれや……。
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