67 ボールドマンの家系

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「そっか……キャムのヤツ、最期だけ恰好つけたのか、キャムのくせして」 「その割には顔が暗いですねシリカ」 「そんなワケっ! ……ない」 サラサに指摘されてムキになったが、まあ指摘どおりなのかもしれない。くそー最後の最後で非情になれなかった。 5日後、ベルルクの街へ到着したがすでに街の人々の手によって決着がついていた。兵士の数はそこまで多くなく、クーデターを起こした指導者には人質を救出した晩に接触して武器や防具を大量に渡していた。 キャムがなぜ父親と自爆したのかはわからない。裏門のところでふたりが焼死体になっていたのを翌日朝に街の住人が発見したそうだ。 これですべての決着がついた。 エブラハイム魔法王国は、暫定的な指導者であったレオナード皇子が正式にレオナード・デマンティウス14世となり、王都デルタと周囲の復興を始めた。 また、一度、裏切ったミラノやウェイクの父親と他の諸侯は斬首の刑に処されたが、家自体は無くならず、子どもの代へ引き継いだ後、旧ドォルドー領の復興と統治を任せられた。 私にとって、ひとつ悲しい出来事が起きた。 賢者アールグレイの夢を見た。オッサンの割にはイケメンな男が花園へ立っていた。私が声を掛けると振り向いて優しい声で囁いた。私の悲願は成就された、と……。 アールグレイの正式な名はアールグレイ・ボールドマン……サラサのご先祖さまというのは以前、教えてもらってはいた。 アールグレイを生前、罠に嵌めたのがテイラーの名を持つ女、そしてボールドマン家を乗っ取ったテイラー家は300年もボールドマンの子孫から権力を奪い光魔法のチカラを搾取し続けてきたそうだ。 別れを告げられた。その後、目を覚ますとアールグレイのブリキ人形はもう二度と私に語りかけてくることはなかった……。
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