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ある日学校が早く終わり正午頃に帰宅した主人公
街はいつもと違って人が少ない
この辺では近頃聞かない鳥の囀りだけが一回おおきく響く
学校を出た主人公の耳に聞きなれない音楽が後方から届いた
大きさは歌詞が聞き取れるか聞き取れないかくらいで
なんというか昭和感あふれるメロディー
古びた小さな遊園地のメリーゴーランドでかかっていそうだ
音は近づくでもなく遠ざかるでもなく延々となっている
主人公は違和感を覚えた
ここに生まれてから住んできて初めて聞いたメロディーだった
地区の運動会は昨日で終わったし
幼稚園ならここからまだ距離があるし方向も違う
本をよく読む主人公はこんなことを考えた
これって怪談でよくあるよね
振り向いたら
音の方へ向かったら
歌詞を忘れなければ
殺される
主人公は身震いした
まさかね
本にも書いてあった
思い込みが怪談を作ると
主人公の横を通り過ぎたパトカーを眺めながら帰路を急いだ
家のドアを開ける前にまたあの音楽が聞こえた気がした
家に入って母親にその話をした
廃品回収か何かでしょ
多分そうだ
気にしないことにした
昼ごはんを食べているとまたそのメロディーが近づいてきた
今度ははっきりと
母親も聞いたようだ
家の前の大道路らしい
窓から見ると
見えたのは縦にラインの入った白いワンボックス車だった
胡散臭そうな廃品回収車だ
ああこれはただで不用品回収とか言ってお金を請求するとかしないとか言う"社会的に"怖い話だったのか
ネットで調べると案の定その車を保持するこれまた胡散臭そうな会社がトップに出てきた
やっぱそうかさあ明日もテストだし勉強でもしようと検索履歴を消して参考書を取り出した
―主人公は幸運だった
ページをスクロールした先には
書いてあったのだ
この企業が50年前にすでに
廃業しているということが
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