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「ふぃー、やーっと行ってくれた。要らない時間とっちゃったし、さっさと掃除を……」
ホウキを取ろうとしたアタシの両肩にライリーの手が置かれる。見上げると、ライリーは思い詰めた顔をしている。
「ど、どうしたの、てんちょー」
「……レイラ。前に、俺の嫁になりたいって言ったな」
ライリーが大好き。
その気持ちに偽りはない。
行くあてのなかったアタシを置いてくれて、失敗しても優しく教えてくれて、大好きにならないわけがない。
「うん。ライリーが良いって言ってくれるなら、アタシはずっとライリーのところにいたいよ」
「なら、嫁に来い」
ライリーはアタシをまっすぐ見て言った。
これまでずっと「大人をからかうな」「年の差を考えろ、冗談で言っているんだろう」って本気にしてくれなかったのに。
「ほんと? いいの? アタシ、ライリーのところにいていいの? お嫁さんになっていいの?」
「俺の気が変わらないうちになるって言っとけ」
「うん。なる! アタシ、ライリーのお嫁さんになるよ!」
優しくて面倒見がよくて、お料理上手で、ボロボロだったアタシを救ってくれたすごいヒーロー。
「おめでとうライリー、レイラちゃん!」
ギャラリーから大きな拍手が贈られてきた。
忘れていたけれどここは店の外。ご近所のみんなに見られていた。
「うおおぉ………いくら焦っていたからって、店の前で何やってんだよ俺!」
「いやー、ようやく言ったかライリー。俺たちゃお前さんがいつまでもにえきらなくてもどかしかったんだよ。レイラちゃんのこと好きなの目に見えてわかるのに下手に大人ぶりやがって」
「おじさん、レイラの前で余計なこと言わないでくれ」
頭を抱えるライリー。アタシよりずっと年上なのに、みんなにからかわれてうろたえる姿が可愛く見えてくる不思議。
「ライリー、ライリー。アタシ、結婚式はこのレストランでしたい」
「気が早すぎる」
「二ヶ月同棲してまだ足りないの?」
「同せ……!? ご近所の皆さんに勘違いされるようなことを言うな。部屋が違うだろうが」
「つまり同じ部屋で寝泊まりすればいいってこと?」
「やめてくれ、俺の理性が持たん」
のろける暇があったら開店準備しろとご近所さんに言われて、アタシたちはやっと仕事に取りかかる。
こうして、レイラことシンデレラは王子ではなく小さなレストランの店長と結婚しました。
その後かわいい三人の子どもたちにも恵まれます。
家族五人、末永く仲良く幸せに暮らしましたとさ。
おしまい
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