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家出しか勝たん
「掃除と洗濯を終わらせておくんだよ、灰かぶり」
「私達の食事を用意しなさい、灰かぶり。あんたの分の食材は無いから、つまみ食いすんじゃないわよ」
見知らぬオバサンとケバい女に、いきなりバケツの水をぶっかけられた。アタシの頭の上から汚い雑巾がずり落ちる。
返事をする隙もなく、オバハンとケバい女は部屋を出ていった。
「マジねぇわ。あのオバハンたちショーガイザイで逮捕されんじゃね?」
バケツの水で汚れた服を見下ろすと、なぜかアタシは、ツギハギだらけのクソダサいワンピを着ていた。
細すぎる手先はヒビとアカギレだらけ。栄養失調?
ていうか声もアタシが十六年間聞いてきた声じゃない。弱々しくてか細い。
見回してみれば、ここは全く知らない部屋。家具も置物も外国映画に出てきそう。
窓ガラスを見ると、そばかす顔の金髪おさげの女が映った。目は金色。どう見てもアタシじゃない。アタシは典型的な日本人だもん。
「これアタシ!? 20才……いや、高校生くらいかな」
適度な肉が付けば美少女だろうに、窓に映るアタシときたらダサくて小汚い以外に合う言葉がない。
ボロを着せられ、母と姉|(たぶん)に召使い扱いされる女の子。灰かぶりなんて呼ばれてりゃ答えは一つ。
「シンデレラになってる?」
絵本の通りなら、実家でイジメぬかれた果てに舞踏会で王子様と出会って結婚してハッピーエンド。
いや、王子に会う前に栄養失調で死にそうなんですけど。
もし生き延びても、庶民で、踊れるダンスなんて盆踊りしかないアタシが王妃なんてマジムリ。
しかも要人ってお硬い習い事だらけで常に護衛とかついてくんでしょ。学校帰りにタピることもできやしない。
政治経済なんて難しいことわかんないし、監視され続ける人生なんてほんとムリ。
住み込みまかない付きの食堂バイトでもすりゃ、奴隷まがいの今よりはマシな暮らしできるっしょ!
アタシ天才!
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