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お尋ね者になったけど、全然バレる気配がない
とっとこ人相書きをレストランの入り口に貼った翌朝。
いつもどおりホウキを持って掃除しようと外に出たら、とっとこさんがメガシンカしていた。
うーん、この。
もじゃもじゃ髭が生えて、つながりゲジマユ。背後には花が飛ぶ。
近所のちびっこたちハイセンスじゃーん。
アタシも国語の教科書に載ってた偉人をアフロ鼻メガネにしてたし、みんな好きだよね、ラクガキ。
クレヨンを片手に、お隣のちびっこ兄妹が胸をはる。
「レイラだーみてみてこれ!」
「おっすレイラ。どうよこれ、サイコーだろ!」
「オッスオッス。すごいね、天才画伯になれんじゃない?」
おたずね者の張本人が目の前にいるのだけど、今とのころ誰にも気づかれていない。
この人相書き(?)でバレるわけがない。
掃除を終えて、ライリーが作ってくれた朝ごはんを堪能する。野菜と肉のスープうまー。
「ん〜今日もおいひーい。ライリーいいお嫁さんになれる。アタシが男なら嫁にするよ、絶対!」
「あー、うん。……俺が嫁なのか」
ライリーはトオイメをして二杯目の紅茶をすすった。
昼下がりになり、常連の一人が来店した。
「紅茶とトーストをくれ」
「あ、雑貨屋さん。いらっしゃーい!」
「紅茶は渋めでよろしく」
雑貨屋さんの店主は五十才くらいのおじさん。疲れた顔してテーブルに突っ伏す。
「いつもならもっと早く来るのに珍しいね〜」
「そうなんだよ、今日は忙しすぎて辛い。聞いてくれよレイラちゃん、ライリー!」
雑貨屋さんの魂の叫びを聞いて、アタシとライリーは顔を見合わせる。
「あの王子が探しているっていう人相書きを持って、貴族の使用人かなんかが押し寄せているんだ! あれと同じお面を作れ、大金積むからどうにかしろって」
「うわー、貴族ってスゴイねー。そんなに王妃になりたいのかな」
いやまてよ。
貴族がこぞってとっとこさんを求めているなら、ほしい人のところにポイすれば逃げられるんじゃない?
よーし、仕事が終わったらとっとこさんをシンデレラの実家に投げ込んでこよう!
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