とっとこさんを投げただけなのに

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とっとこさんを投げただけなのに

 こうして意地悪な継姉は王子様と結婚して、末永く幸せに暮らしましたとさ。アタシはライリーのところで庶民生活を続けられるし、めでたしめでたし………っていう予想は大ハズレした。  とっとこさんを押し付け(プレゼントし)た翌日。  シンデレラの継姉と継母はタイホされましたとさ。  どういう展開なのさこれ。  元家族がタイホされた話を聞きつけて、店じまいの後ライリーと一緒に見に行った。  元実家のまわりには警官が何人もいて、何か調べているようだった。 「えええぇ……たった一日で、なんでこんな大事件になってんの?」 「遠目に見ているだけじゃわからないな」  ライリーが井戸端会議真っ最中のおばちゃんたちのところに行って話を聞き、戻ってきた。 「ナニゴト?」 「あー、うん。レイラ。確かめたいんだが、お姉さんの髪は何色だった?」 「黒髪?」 「レイラは」 「みてのとーり、金髪だよ」 「そのせいだ」  ふむ。おばちゃんたちが警官さんからぬすみ聞きした話によると、  継姉はとっとこさんを持って城に行き「自分が貴方の探している娘です」と名乗り出たらしい。  しかし、とっとこさんをつけていた娘は金髪だったのに、名乗り出た娘は黒髪。 「王子様を騙そうとした不届き者め! 本当の持ち主はどうした!」とお城の人たちは大騒ぎ。  継姉はタイホされた。  継母は知らぬ存ぜぬと通したが、ご近所のおばちゃんたちの証言により、『この家にはシンデレラという、金髪の娘がいた。ひどい虐待を受けていたようで痩せこけていて、二ヶ月ほど前から姿を見ていない』ということが発覚。  もしやその娘を殺すか監禁するかして、王妃の座を奪おうとしたのでは、と疑いをかけられ継母もタイーホ。  警官さんたちは行方しれずとなったシンデレラの捜索中、と。  アタシは知らぬ間に、意地悪な継姉と継母を退治していたようだ。 「とっとこさんを投げただけなのに」 「バカなこと言ってないで早く店に戻るぞ、レイラ。探されている張本人だろうが」 「はーい」  ライリーに手を引かれて、警官に話しかけられる前に退散。  ワルモノはいなくなったけど、名前が判明し王室と探偵から大捜索されて、居所がバレないわけがなく。  一週間後。  開店準備をしていたアタシのところに、見慣れないゴージャスな馬車が現れた。
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