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舞踏会はどうでもいいから、はやくライリーのところに帰りたい
ライリーが貸ドレス屋のお金を出してくれて、アタシは舞踏会にいくことになったのさ。
つっても、「美貌ではなく人となりで后を選べ」というのが王様の意向らしく、仮面舞踏会である。
ようは顔を隠せれば何でもいいってことでオーケー?
アタシはこのために、市場の掘り出し物を買ったのさ。
ひょんひょん、いや、とっとこだったかな。そんな名前のお面。
お迎えの馬車に乗って、とっとこお面をつけて会場入りする。
アニメ映画で見たような、きらびやかなホール。照明のシャンデリアが下がっている。
見渡すときれいなドレスのお姉様がたくさんいた。王子様はよりどりみどりだね、仮面つけててもみんなキレイってわかる。
未婚女性って条件だからか、継姉もいた。はー、あの意地悪ドス黒オーラは仮面でも隠せないよ。
アタシがホールに足を踏み入れると、会場中の視線が集中した。
何あの子やば、ぷっクスクス。ってこっちを横目で見ながら、イヤーな笑い方をしている。
なんで笑われてんの。ちゃんと場をわきまえた舞踏会用のドレス着てんじゃん!
「コルネリウス王子ご入場です」
くるくる髭のおじさんが仰々しく言う。
絵本から出てきたようなキラキラ王子が会場の中央に歩み出てきた。
「僕のために舞踏会に来てくれてありがとう、お嬢様がた。あまり固くならず、自分の家にいるように気楽に過ごしてほしい」
いや、こんなゴージャスなとこでそこまでくつろぐの無理。肩がこるわー。
さて、主役の王子も出てきたことだし、アタシ、帰っていいよね。帰るの遅くなると家主のライリーが心配するし。って思ったのに。
「君、面白い仮面をつけているね。そんなものどこで手に入るんだい」
「へ?」
とっとこお面のアタシに、王子が声をかけてきた。他の人に声をかけてるのかとも思ったけど、アタシは遠巻きにされてたから、会話の届く範囲に人はいない。
まじかよ、なんの特徴もない庶民に王子が話しかけてくるなんてシナリオ補正やばい。
ドレスだって貸ドレス屋の中でも一番やっすいドレスなのに。
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