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「えーと……さ。舞踏会、とっくに終わってるよ?」
「え?」
取り返しのつかない事態になっているとわかった魔法使いの孫。ひゅるりら〜と風が吹き抜けてから、我にかえった。
「うっわぁあああ! せめてその子を見つけてドレス着せて馬車を出さなきゃばあちゃんにシメられる!! やめて、ぼくのライフはもうゼロだよ!」
「ギックリ腰してる割に強いね、おばあちゃん」
どのみち探偵事務所に行かないといけないみたい。
「アタシが本人でーす」って名乗り出ればこの人の仕事はここで終わりなんだけど、お城に行くルートはカンベンしてちょ。
探偵事務所の扉をくぐると、調査員たちが忙しなく走り回っていた。
ここのショチョーはレストランの常連だったりする。
「おやレイラちゃん。依頼か?」
「依頼人はアタシでなくこの人。迷子になってたから連れてきた」
「ふむ。詳しく聞こうか。ありがとう、レイラちゃん」
「気にしないでよ〜。そいじゃアタシはこれで、ばいびー」
正体がばれたらジ・エンド。トンズラしようとしたら、ショチョーに呼び止められた。
「あ、レイラちゃん。これレストランに貼ってもらえないか。城から来た人相書き。王子はこの人を見つけたら婚約を申し込みたいんだとさ。笑っちまうけど」
「それくらいならてんちょーもいいって言うと思う。笑っちゃう人相書きってどんなん?」
受け取った瞬間、腹筋がよじれそうになった。
描かれていたのは、とっとこ公のお面をつけたアタシ。
おもしれー女通り越して奇人変人。
王子とダンスしてないしガラスの靴も落としてない。
秒で帰ったのに、どうしてこうなった!
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