プロローグ

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夢中になって、そのキラキラを見つめる美空に、 母は穏やかな声で言った。 「その宝石はね、トパーズって言うのよ」 「トパーズ?」 「そう、トパーズ。トパーズっていうのはね、あるお姫様の流した涙を瓶に溜めていき、それを結晶にしたものなの。それが宝石のトパーズになったのよ」 母はそう私に説明した。 「けっしょう?」 「結晶っていう言葉は、まだ美空には分からないわね。うーん、そうねぇ...涙を固めたものかしら?」 「ふぅん...でもなんで涙なの?」 「なんででしょうね?」 「じゃあ私も泣いたら瓶に涙を溜めるわ! そうしたらこの宝石と同じものが出来るんでしょう?」 「フフッ、それはどうかしら? お姫様の涙じゃないとダメかもしれないわ」 「そうなの?」 美空は少しがっかりした。 「それにね、トパーズを作る涙は、『悲しみ(●●●)の涙』じゃないとダメなのよ。『喜び(●●)の涙』ではダメなんですって...」 その時の美空は、母の言っている意味がよく分からなかった。 しかし、なんとなく分かったようなふりをする。 とにかく、母の言いたかった事は、 トパーズにする為の涙は、悲しみの涙でなければダメだという事らしい。 美空は、指輪にするなら『喜びの涙』の方がいいのではと思った。 それを母に聞いてみる。 すると母はこう言った。 「『喜びの涙』ではダメなの。『悲しみの涙』じゃないとね...。沢山の悲しみを経験した涙だからこそ、その後幸せの宝石に変わるらしいわ。だから『悲しみの涙』じゃないと駄目なの」 母はそう言って笑った。
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