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プロローグ
その日、いつものように目をキラキラとさせながら、
美空は宝石箱を覗き込んでいた。
美空は、母の宝石箱が大好きだった。
木製でアンティーク風のその宝石箱は、
重厚感に溢れ、何とも言えない品格が漂っていた。
まるで、西洋のお城の中にありそうな...そんな宝石箱だった。
美空は母が化粧をしている傍らで、
いつもその宝石箱を覗くのが日課だった。
美空は沢山のジュエリーの中で、
オレンジ色の石がついた指輪が一番のお気に入りだった。
母はドレッサーに向かって化粧をしながら、美空に言った。
「美空はその指輪がお気に入りなのね...」
「うんっ、お母さんの指輪の中で美空はこれが一番好きよ!」
「その指輪のどこがそんなに好きなの?」
「美空は、このオレンジ色が大好きなの!」
そのオレンジ色の指輪は、
窓から降り注ぐ太陽の光にかざすと、輝きを一層増す。
美空は小さな指でその指輪を取り出すと、
光にかざして指輪がキラキラと光る様子を、
飽きることなくいつまでも眺めていた。
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