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僕らの仲は十年になるだろう。
月に一、二回、この場所で会うだけだけれど、
ユキさんとの間には確固たる絆が築けていると思っている。
「今日はあの日のようだね」
突如として話し始めた。
ユキさんが思い浮かんでいるのはきっと僕らが出会ったあの日のことだろう。
「そうですね」
もし、あの日がなかったら、こんな心臓が張り裂けそうなほど胸が高鳴ることを知らなかった。
ユキさんの姿を見るたびに喜んでる自分がいるなんて、気づいた日はすごく照れ臭かったのを覚えている。
ユキさんとこうして何十年と一緒にいたいなんて、言ったら気持ち悪がられるだろうな。
「今日はもう、帰ろうか」
冬の夜は早い。それがとても嫌いだけれど、奇跡の起こりやすい季節だとは思う。
「また、会いましょうね」
もう少しだけ一緒にいたいなんて、言えなかった。
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