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▽~~~~▽
○月3日
昨日は大変だった。
「俺は悪くない」「彼女がいけないんだ」と声に出しながら日記に書いたところを長兄に見つかり、「いいかげんに目を覚ませ」「お前がそんな態度じゃエリザベスが可哀そうだろうが!」と有形力を行使されてしまったのだ。
気持ちは分からないでもないが落ち着いてほしい。
俺ごときが天から舞い降りた彼女の前で上手く立ち回れるわけないだろうが!!!
ところで、今日はマイハニーが勉強のために王宮の教師のところの来る日だ。
マイハニーが俺の行動圏内にいると思うだけで力がみなぎってくる。今日は最高にいい日だ。彼女の顔を見ることができたら、もっと最高の一日になるだろう。
そう思って、彼女のことを覗きに行ったんだ。
そうしたら、彼女は何と、教師にクッキーを渡していたんだ!!!!!!
俺は彼女のクッキーを食べたことがないのに! 男の教師なんかに!!!!!!!
だから、俺はその場に乱入して、「甘いものが食べたかったんだ、気が利くな!」と言ってクッキーに手を出した。そして慌てて咀嚼して、味わう間もなく飲み込み、教師の方を見てやった。
そうしたら、彼女は「ととと突然現れて勝手に取らないでよ!」と怒り出したので、「なんだよ、こんな男にはクッキーを贈るのに、俺が食べたら悪いっていうのか!」と叫んでしまった。違うんだ。マイハニーにはこう、優しい言葉をかけたいと思ってるんだ。しかし、このときは(このときも?)つい、叫んでしまった。
そうしたら今度は、「おやおや、『こんな男』とは……私も……若者扱い……されたものですな……」と、教師が震えながら笑い出したんだ!!!
しかも、エリザベスは涙目になり、「もう、ばか! ばか!! 知らないんだからね!!!」と言って、慌てたように走り去っていってしまった。
なんだ。
いったいなんなんだ。
とりあえず、「今後必要以上にエリザベスに近づくな!」と教師には伝えておいた。
教師は、「……授業はいいんですよね? 殿下の御父上からのご依頼ですしね」と、ぷるぷる震えながら聞いてきた。それは俺にも防ぎようがないと思い、「頼むから授業のときも十メートルは離れてほしい」と頭を下げてしおらしくお願いした。教師は爆笑していた。あれは本当に酷い大人だと思う。
ちなみに、何故か夕方、父上と母上が医者を連れて、心配そうに俺の様子を窺いにきた。
健康診断だと言っていたけれど、一体なんだったのだろう。
△~~~~△
「わたしが作ったクッキーを横取りしたあの日の!!!!」
「その節は本当にごめんね……」
「いえ。どちらかというと、わたしが謝るべきかもしれないわ」
「え?」
「あれ、六十歳記念に犬を飼い始めた教師のために作った、犬用クッキーだったの」
「ゲッホゲホゲホゲホ」
「人体に悪いものは入っていないけど、薄味だったと思うし、不安だったから、国王陛下と王妃様に伝えに行ったのよ」
「それで親父とお袋が様子を見に来ていたのか!!!!」
頭を抱えるマイケルに、エリザベスは痛ましいものをみるような顔をした後、日記に目を落とす。
確かに、ここでいう『マイハニー』はエリザベスのことのようだ。
だが、しかし……。
「なるほど殿下は創作系小説の執筆にハマって」
「どうしてそうなるんだよ!!!」
「いえ、でも、だって。殿下はわたしのこと、好きじゃないでしょ?」
「好きだよ!! 出会った時から、俺はエリーに惚れてるんだから!」
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