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しーんと静まり返った室内に、マイケルが居心地悪そうにつぶやく。
「君には、全然伝えてなかったけどさ……」
エリザベスは、真顔になっていた。
だって、突然この面白日記が、マイケルがエリザべスへの愛をつづったものだと聞いて、信じられようか。いや、無理。
「無理だと思うから、色々用意したんだよ」
「あら。心の声が口から出てました?」
「そうだね……」
疲れ果てた様子のマイケルは、次の観光地(?)へとエリザべスを案内した。
そこは、マイケルの隣の部屋のクローゼットだった。
マイケルが開けていいと言うので、エリザベスがクローゼットの扉を開くと、その中には彼女が目を疑うような品々が入っていた。
華やかな衣装の、女性服、女性用の鞄、女性用のお飾り。
薄水色地に金の刺繍が入っているなど、全てマイケルの色で染まっているのが異様な光景である。
エリザベスは絶句した後、呟いた。
「……あいつ、浮気してる……!!」
「だからなんでだよ!!? 全部君へのプレゼントだよ!!」
「いえ、でも、この洋服が全て私あての品である可能性は、王宮に隕石が落ちる可能性よりも低いわ……」
「どれだけ自己評価が低いんだ!? 君のものだってば!!」
「でも、ほとんどの品のサイズが、わたしとは違うもの。それに、わたし用に作ったなら、なんでわたしに渡さないのよ?」
眉根をよせるエリザベスに、マイケルは目を彷徨わせながら、もごもごと言い訳をする。
「ずっと渡したかったんだけど」
「うん?」
「独占欲丸出しすぎて、なんか恥ずかしくなってきて、渡したいなーと思いながらずっと悩んでいたら、君が成長してしまって」
「え?」
「だから、その。君と出会ってから、毎年、毎シーズン、作ってたから」
顔を真っ赤にしているマイケルに、漸くエリザベスはまじまじとクローゼットの中の服を見る。
言われてみれば、小さなものほど、大分前の流行の意匠のものとなっている。
「なんで言わないの」
「日記に書いてあるけど見る?」
「いえ、いいわ」
真顔のエリザベスに、マイケルは涙目で俯いた。
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