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この後も、マイケル主導の恐ろしいツアーは続けられた。
マイケルがエリザベスに贈りたかったポッティ用のボール、フリスビーが上手くなるための指南書、『簡単に言える誉め言葉集』という謎の本、エリザベスに贈るために美しい紙につづられ、封筒に入ったポエム集……。
「しにたい」
「自分で案内しておいてなんなのよ……」
全てのツアーを終えた二人は、王宮の南の塔の上、見晴らしのいい展望室で、王都を眺めながら、二人で話をしていた。
「仮に殿下がわたしのことを好きだったとしてよ?」
「好きなんだってば……」
「なんでわたしからポッティを奪ったのよ」
「君が、ポッティの世話のために、今シーズンは王宮に来ないって言いだしたから」
エリザベスは目を瞬く。
そういえば、そんなことを言ったかもしれない。
そもそも、エリザベスが王宮の子ども部屋に通っていたのは、兄エイベルの付き合いに過ぎなかったのだ。
だから、他所で用事があるなら、エリザベスは王宮には来ない。
「俺に会いにくるっていう用事はそもそもなかったみたいだしさ……」
「会いに来てくれたらよかったのに」
「え?」
「皆の居る前で、殿下だけうちに誘ったら、『ずるいずるい』って大変なことになっちゃうでしょう? だから、後で二人になったときに、『殿下の方からポッティとわたしに会いに来て』って言おうと思っていたのよ」
くすくす笑っているエリザベスに、マイケルは涙目になった後、はあーーーとため息を吐いた。
「どうしたの?」
「いや。もう、本当、自分が情けないよ」
「ふふ。昨日はずっと余裕だったのに、今日はそんな姿ばっかりね」
「惚れた弱みだよ。昨日は取り繕っていたけれど、俺は君の前ではいつもこうだ」
マイケルはがっくりと肩を落とした後、展望室のソファの背もたれにぐったりとよりかかった。
憔悴した様子のマイケルに、エリザベスは微笑むと、窓の外、晴れ渡った空や王都の美しさに目をやる。
いつも見ているはずの光景は、なんだか美しくて、穏やかな気持ちで、エリザベスはマイケルに話をすることができた。
「わたしね、本当は九歳で婚約したときから、殿下が好きだったの」
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