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びくりと肩を震わせるエリザベスに、マイケルは肩を竦めた。
「どうしたの、可愛いエリー。最初は俺の登場に戸惑っていたくせに、いなくなると思うと寂しくなった?」
「うん」
「……素直だな」
「わたしはいつでも素直でしょ」
「……ああ、うん、そうだよね!」
「どうしても行っちゃうの?」
縋るような瞳で見つめてくる婚約者に、マイケルは大人びた顔で、微笑む。
「俺が消えないと、奴が返ってこれない」
そう言うと、マイケルはエリザベスの頬に手を当てた。
「十六歳のエリザベス。君は今でも素敵な女性だけど、これから十五年、沢山のことを経験して、ますます素敵な女性になるよ」
「……そうなの?」
「そう。エリーは、俺の自慢の奥さんになる。俺の知るかぎり、最高の女性だ。俺のことは信じてくれるんだろう?」
エリザベスは、彼の言葉に頷くことができた。
彼の言葉は、すとんとエリザベスの心に入ってきた。
きっと、目の前の彼は、心からそう思ってくれている。
そう思えたからだ。
「だからさ、俺は君と結婚した未来を守りたいんだ。どうかエリー、頼むから俺を見捨てないで」
「最後が情けないわ」
「言っただろう? エリー相手だと、いつもこうなってしまうんだ」
マイケルは、エリザベスの頬にキスを落とした。
エリザベスは、今度は気絶しなかった。
ふたりでくすくす笑いながら、手を繋いで、お互いだけを瞳に映す。
「エリー。世界で一番愛してるよ」
それだけ言うと、彼は目を閉じた。
ふわりと、虹色の光が彼を包んで、そしてそのまま、光は霧散してしまう。
そうして、ゆっくりと目を開けたのは、彼ではない。
エリザベスが目の前の彼を見つめていると、マイケルはふと口を開いた。
「……エリザベス?」
その言い方に、その表情に、エリザベスは心からの笑みを浮かべる。
「おかえりなさい、殿下」
マイケルは、くしゃりと顔を歪めて、泣きそうな顔で、小さく呟く。
「君が好きなんだ」
「……聞いたわ」
「先に聞いてしまったのか」
「でも、貴方から聞きたかったの」
顔を上げるマイケルに、エリザベスはぽろりと涙をこぼす。
「ずっと、貴方から聞きたかったの」
ぽろぽろと涙をこぼし続けるエリザベスを、マイケルはしっかりと抱きしめる。
「今までずっと、ごめん」
そう言ったマイケルの声も、涙にぬれていた。
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