3 3日目

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 びくりと肩を震わせるエリザベスに、マイケルは肩を竦めた。 「どうしたの、可愛いエリー。最初は俺の登場に戸惑っていたくせに、いなくなると思うと寂しくなった?」 「うん」 「……素直だな」 「わたしはいつでも素直でしょ」 「……ああ、うん、そうだよね!」 「どうしても行っちゃうの?」  縋るような瞳で見つめてくる婚約者に、マイケルは大人びた顔で、微笑む。 「俺が消えないと、奴が返ってこれない」  そう言うと、マイケルはエリザベスの頬に手を当てた。 「十六歳のエリザベス。君は今でも素敵な女性だけど、これから十五年、沢山のことを経験して、ますます素敵な女性になるよ」 「……そうなの?」 「そう。エリーは、俺の自慢の奥さんになる。俺の知るかぎり、最高の女性だ。俺のことは信じてくれるんだろう?」  エリザベスは、彼の言葉に頷くことができた。  彼の言葉は、すとんとエリザベスの心に入ってきた。  きっと、目の前の彼は、心からそう思ってくれている。  そう思えたからだ。 「だからさ、俺は君と結婚した未来を守りたいんだ。どうかエリー、頼むから俺を見捨てないで」 「最後が情けないわ」 「言っただろう? エリー相手だと、いつもこうなってしまうんだ」  マイケルは、エリザベスの頬にキスを落とした。  エリザベスは、今度は気絶しなかった。  ふたりでくすくす笑いながら、手を繋いで、お互いだけを瞳に映す。 「エリー。世界で一番愛してるよ」  それだけ言うと、彼は目を閉じた。  ふわりと、虹色の光が彼を包んで、そしてそのまま、光は霧散してしまう。  そうして、ゆっくりと目を開けたのは、彼ではない。  エリザベスが目の前の彼を見つめていると、マイケルはふと口を開いた。 「……エリザベス?」  その言い方に、その表情に、エリザベスは心からの笑みを浮かべる。 「おかえりなさい、殿下」  マイケルは、くしゃりと顔を歪めて、泣きそうな顔で、小さく呟く。 「君が好きなんだ」 「……聞いたわ」 「先に聞いてしまったのか」 「でも、貴方から聞きたかったの」  顔を上げるマイケルに、エリザベスはぽろりと涙をこぼす。 「ずっと、貴方から聞きたかったの」  ぽろぽろと涙をこぼし続けるエリザベスを、マイケルはしっかりと抱きしめる。 「今までずっと、ごめん」  そう言ったマイケルの声も、涙にぬれていた。
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