1 風が吹いたら?

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 解消よ!!!!  とエリザベスが言おうとしたところで、風が吹いた。  暴風で女性陣のスカートが翻り、目を凝らした男性陣の目に砂が入り、その中に居た巨漢がよたつき、お尻で果物屋台の荷車にぶつかり、荷車が坂を転げ落ち、根元が腐って倒れそうだった神木にぶつかり、神木が大きく揺れて根元で本を読んでいた魔術師の頭に当たり、魔術師の持っていた魔石が複数転がり、二人の近くにそびえたつ女神の像を取り囲むように落ちた。  像が光り輝き、周囲の者が唖然としたのもつかの間、視界が真っ白に染まる。  結果、ドガーンと雷が落ちたような音と共に、女神像は爆発した。  粉微塵になった気の毒な女神像のかけらは、周囲の観衆には当たることなく、だがしかし、エリザベスとマイケルの頭にクリティカルヒットした。  倒れ伏す二人。  沈黙の護衛達と観衆。  三十秒ばかり固まっていた彼らは、ぴくりとも動かない二人に、ようやく我に帰って助けを呼びに走ろうと動き出す。  動き出したところで、むくりと起き上がったのはマイケルだった。  マイケルはぼんやりと辺りを見渡した後、ハッと何かに気がついたようなそぶりで辺りを見渡し、気絶したエリザベスを発見する。  唖然としたような顔をした後、彼は慌ててエリザベスに駆け寄り、駆け寄ったマイケルに声をかけられたエリザベスはようやく目を覚ました。 「エリー、大丈夫か!」 「えっ? ええ、大丈夫……」  エリザベスは、ゆっくりと意識を浮上させながら、目をぱちぱちと瞬く。  なんだか、誰かに抱えられている気がする。  誰かというか、マイケルだ。  なんだマイケルか。  げんなりした気持ちでしっかりと目を開けると、そこには心配そうにこちらを見つめる碧い瞳があった。 「よかった、エリー! 愛しい君が倒れていたから、息が止まるかと思ったよ」 「ええ」  ……。 「……ええ?」
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