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「まだ意識がはっきりしないのかい、エリー」
「…………マイケル?」
「そうだよ。マイクと愛称で呼んでほしいな」
「え?」
「君にマイケルと呼ばれるのは、他人行儀に感じて辛いんだ」
「……え?」
「可愛いエリー、それよりも痛いところはないかい? 何かおかしなところは?」
「わたしは大丈夫だけれども……おかしなところがあるのは貴方ではなくて?」
「俺はいつでも君への愛でおかしくなりそうだけど」
「どういう返事なの!?」
「今は君が傍に居るから大丈夫だよ」
「お医者様を呼びましょう!」
「そうだね、君は急にこんなことになって動転しているようだし、医者を呼ぼう」
「動転しているのはわたしかしら!? 貴方ではなくて!?」
「とりあえず、王宮に戻ろうか。俺だけのお姫様」
そう言うと、マイケルはエリザベスを横抱きにして、ベンチに座らせる。
ざわつく侍女や護衛、観衆達の心は、エリザベスの心と共にあった。
なんだ、一体何がどうしたというのだ。
先ほどまでのシャイボーイはどこへ行った?
エリザベス達が動揺の余り固まっている間に、マイケルは護衛たちに指示し、馬車を呼びつけて二人で乗り込んでしまった。
その馬車の乗り方も普通ではなかった。
馬車の中では、何故かマイケルがエリザベスを横抱きにしたまま、膝に座らせているのだ。
あまりの展開に、エリザベスが抵抗するのを忘れて固まってしまったが故の事態である。
「おかしいわ……」
「うん?」
「おかしいの……絶対おかしいと思うの……」
「可愛いエリー、どうしたの」
「耳元でこしょこしょ喋るの、やめてくれるかしら!?」
「だって、エリーは耳が弱いから」
「確信犯! いえ、なんで知ってるの!?」
「愛しのエリーのことはなんでも調べたからね」
「どう調べたら耳が弱いことが分かるっていうのよ!!!!」
くすくす笑っているマイケルに、エリザベスは涙目になる。
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