1 風が吹いたら?

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 マイケルがおかしい。  あからさまにおかしい。  エリザベスの知っているマイケルは、こう、子どもっぽくて、エリザベスに興味がない男だったはずだ。  こんなふうに、エリザベスのことを愛称で呼んできたり、睦言を囁いたり、膝に載せたりする男ではない。  大体、こんなのは、エリザベスの大好きな溺愛系小説の中でしか起こり得ない出来事のはずだ!!  エリザベスが顔を真っ赤にしてわなわな震えていると、マイケルがとうとう声を上げて笑い出した。 「何がおかしいの!!」 「いや、やっぱりエリーは可愛いなと思って」 「心にも思わないことを言うのはやめてちょうだい!!!」 「いつもいつでも、心から思っているよ。俺のエリーは最高に可愛い」  エリザベスは、マイケルの慈しむような視線を受け止めることができない。  マイケルの顔は、なんだか大人びていて、エリザベスの知っているマイケルとは違って見えるのだ。  動揺しすぎて頭をショートさせているエリザベスに、マイケルはようやく秘密を打ち明けた。 「実はさ。俺は十五年後の未来から来たマイケルなんだよね」  目を丸くするエリザベス。  マイケルの様子がおかしいとは思っていたが、とうとうここまでおかしくなってしまったのか。 「俺の奥さん(未来のエリー)曰く、四十八時間ぐらいで戻れるらしいんだ。だから、それまでよろしくね。愛しい婚約者さん(十六歳の可愛いエリー)」  そう言うと、マイケルはエリザベスの頬にキスを落とした。  エリザベスは気絶した。
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