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2 2日目
「やあ、エリー。今日も一段と美しいよ。流石は俺の未来の奥さんだ」
翌日。
マイケルは朝からエリザベスを迎えに来た。
エリザベスは昨日、気絶したまま、マイケルの手によって侯爵家王都別邸に送り届けられた。
だから、彼女が彼に会うのは、頬にキスをされて以降、初めてのことだ。
さてはて、侯爵家王都別邸にやってきたマイケルは、昨日と様子が変わっていなかった。
いや、キラキラしい笑顔に加えて、真っ赤な薔薇の花束を持っているあたりは、昨日よりもある意味、迫力が増しているといえる。
そのあまりのまばゆさに、居間にいたエリザベスは目を丸くして固まった。
ついでに、侯爵家の一同は、いつもと明らかに様子が違う未来の婿に、顎が落ちんばかりに口を開いて唖然とした。
そんな彼女達に構わず、マイケルはニコニコ満面の笑みである。
この状況下でいち早く我に返ったのは、エリザベスの父であった。
「で、殿下。ご機嫌麗しゅう……」
「ああ、侯爵。早くからすまないな」
「いえ、私共はまあ、なんの問題もなく……」
「麗しい我が未来の花嫁が他のツバメに攫われないよう、射止めに来たんだ。エリザベスを連れて行ってもいいかな?」
マイケルの言葉に目が飛び出さんばかりに驚いて、慌ててエリザベスを見る父侯爵に、エリザベスは無性に恥ずかしくなり、顔を覆って「もうやめて!」と叫ぶ。
「ああ、エリー。そうだね、君以外の人間とばかり話をしてすまない」
「そこではなく!」
「嫉妬する君も可愛いよ。大丈夫、今から丸二日、君のためだけの時間の幕開けだ!」
「『プレゼントは僕』みたいな発言やめてくれるかしら!?」
「君の一番喜ぶことを考えた結果だ……」
「自己評価が高すぎる」
「冗談だよ。俺が君と一緒に過ごしたいんだ。一緒に来ていただけませんか、婚約者殿」
紳士の礼でそう言われてしまっては、さしものエリザベスも断ることができない。
ふわりと大人びた笑いを浮かべるマイケルに、動揺に震えるエリザベスは攫われるようにして侯爵家を出た。
背後で、「ツバメ……」と呟く父侯爵の言葉が聞こえた気がするが、エリザベスは自分の心を守るために、耳を物理的に塞ぎ、ついでに心の耳も塞ぐ。
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