第二幕 驚嘆と愁嘆のサーカス

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 二人で同じ仕事をしてもしょうがないということで、それぞれ別の場所で働くことになった。僕は酒屋の仕入れの荷運び、ヘルは大工の手伝いだ。単純な力仕事なので疲れはするが、出生をあれこれ聞かれずに雇ってもらえるのは、こちらとしてもありがたかった。  一週間ほど仕事を続けていると、よく出入りする酒屋の人たちとは顔馴染みになっていた。 「ついにこの町にもレーヴが来るんだって!」 「やった! ちゃんとお小遣い貯めておかなきゃ」  酒屋の店主の子供たちが、何やら楽しそうに一枚の紙を囲んでいる。 「レーヴ?」 「アイリスにいちゃん知らないの?」  作業の手を止めた僕に、子供たちは驚いた顔をした。 「有名なサーカス団だよ」 「いろんな国を旅してるサーカス団で、今は隣の町にいるんだって」 「来月はここに来るんだよ!」  僕は子供たちが見せてくれた紙を受け取った。レーヴが宣伝のために用意した広告のようだ。 広告の情報と子供たちの言葉を整理すると、レーヴというサーカス団は、エブロ半島内の三カ国、フラワ帝国・フェルス王国・ヴァーク帝国を旅して回っているらしい。ここ二年はフェルス王国の各地を巡っていたらしいが、先月からフラワ帝国内で公演をしているそうだ。 「二年……」  フェルス王国の国王が変わったのは約二年前だ。そして泣き笑い病が流行り出した時期でもある。レーヴには何か裏があると見て間違いなさそうだ。僕は子供たちに礼を言って作業にもどった。             *
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