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第二十二話 『ごめ…ん……』
〘お知らせ〙
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それでは続きをどうぞ(*>∀<)ノ
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「彼女から離れてください──!!」
「え──さくら……? どうしてここに!?」
珊瑚ちゃんの手を掴み、俺はそう言い放つ。珊瑚ちゃんが突如現れた俺に、動揺の声を上げた。
俺はそんな珊瑚ちゃんの手を引き、珊瑚ちゃんのことを掴む二人の男から引き剥がそうとするが、力が強くてピクリとも動かない。
「この子がさっき言ってた友達? いいじゃん、君もこれから一緒に遊ばない?」
言葉を発した男の方へと視線を向ける。
金髪の髪をワックスで逆立たせ、いかにも自分いけてるだろ、と言わんばかりの自信に満ちた表情。
俺からすればいきってホストのような格好をして、自分をいけてると勘違いしている痛い男なのだが。
そんな男がズボンに手を掛けて……ズボンに手を掛けて……!?
ズボンに手を掛けていると言うことは、スボンを下ろそうとしていたのか……? ていうか、ズボンの上からでもわかるくらいめっちゃ起ってるし……。
これってそういうことだよな。
そんなシーンは原作にはなかったはず。本来であれば、あの男三人組が珊瑚ちゃん相手にしつこくナンパしている程度だったはずだ。
ということは俺が来るのが遅かったから……?
俺が珊瑚ちゃんの手をつかんだとき、珊瑚ちゃんの身体が震えているのがわかった。
俺が来るのが遅くて、本来よりも珊瑚ちゃんを怖がらせたということか……?
俺は改めて男の方に視線を向けると、男は俺の目の前まで来ていた。
「うおっ、て言うか君めっちゃおっぱいでかくね!? 触っていい!? 触っていいよね!? 触っちゃお」
男が伸ばしてきた手を俺は片手ではたく。
そんな俺の出した手なんて男にとってはあってないようなもので、男の手はすぐに俺の胸に到達した。
「うわぁ、めっちゃ柔らかいじゃん。そっちの子のも触ったけど全然揉み心地違うな」
「……は?」
今こいつなんて言った……?
こいつ珊瑚ちゃんの触ったのか……?
「さ、さくら……!」
珊瑚ちゃんの声で、俺は無意識に珊瑚ちゃんの手を掴んでいた自分の手が、強く握られていることに気づいた。
珊瑚ちゃんの顔を見ると、少し痛そうに顔を歪ませており、俺は慌てて手を離す。
「ご、ごめん……」
「あ、ううん。大丈夫……。それよりあたしの方こそ巻き込んじゃってごめん……」
痛そうな顔の次は申し訳なさそうな顔。
違うんだよ。巻き込んだのは俺だ。俺のせいで珊瑚ちゃんをこんなに傷つけて、こんな顔にさせて……。
俺は珊瑚ちゃんが一人でトイレに向かうとこの男達に絡まれるのを知っていた。
それを自分の目的のために一人でいかせて、助けた風を装って、そして珊瑚ちゃんにこんな顔をさせた。
今さら自分のやったことに気づき自己嫌悪に陥る。
──でも、それは後だ!
今はまず珊瑚ちゃんをつれてここから離れよう。
でも、どうすればいいのだろう。力では到底敵わない。
俺は改めて今、身を屈めて俺の胸を揉んでいる男の顔を見下ろす。
女を自分の性処理の道具としか思っていない顔。反吐が出る。
俺はそいつの顔をめがけて膝で蹴り上げる。
「う──っ!」
男は軽く呻き声を漏らし、後転する。
膝で人を蹴るなんて初めての経験だ。膝がジーンと痛む。
「彰くん!?」
取り巻きの一人が男の名を呼ぶ。
「手ぇ離すな! その女さえ捕まえておけばこいつも逃げ出せねぇ!」
さすがにばれているか。さて、どうしたものか。
ここは物陰でそこまで人目もない。とはいえ目につかないというだけで人通り自体はあるし、大声を出せばなんとかなるか……?
そう思った矢先、彰という名の男は俺の口を塞ぐ。
「大声は出すな。……あ、そうだ。君が相手してくれたらあっちの子は見逃してやるよ。さっきの蹴りもなかったことにしてあげる。それならいいでしょ?」
何がいいんだ。いいわけあるか。
俺は俺の口を塞ぐ男の手に噛みついた。
「痛っ──」
「お前、無理やりじゃないと女とヤれねぇの? だっせぇな」
「あぁ!?」
思わず口からでた言葉は、桃井さくらが到底言わないような言葉で。いや、これでいこう。
威圧的に煽り散らかしてやろう。
このタイプの男は女にも手を出す。というか怒りで我を忘れるタイプだ。
殴られて大事にでもしてやろう。解決方法は原作と一緒だ。
「大体なんだよその頭。イキるんだったらもっと自分磨けよ」
「さくら……?」
珊瑚ちゃんは動揺の声を上げる。どう考えても桃井さくらが言うような言葉じゃないもんな。これはもう後で追求は逃れられないだろう。
でもそれも甘んじて受け入れよう。俺のせいで珊瑚ちゃんを傷つけたのだ。
「お前もう一回言ってみろ!」
「ダサいって言ってんの。格好も生き様も」
「てめぇ──!!」
男が右手を大きく後ろに振りかぶる。
来る──。俺は、とっさに顔を守るように左手でガードをするも、男の拳がぶつかると軽々と吹き飛ばされ、地面に頭をぶつける。
痛い──。気が飛びそうだ。
でもまだだ。まだ珊瑚ちゃんに謝れてない。
「さくら──!!」
「彰くん、これはさすがに……」
「ちっ……。逃げるぞ。誰かに見られてたら──」
「失礼するね。ここで男女が揉めてるって通報があったんだけど……。うん、事情を聞くまでもないね」
いつの間に、取り巻きの手から離れたのか珊瑚ちゃんが俺に駆け寄って来てくれる。
辺りが先ほどまでとは違い、少しざわついている。
「さくら──! さくら──!!」
珊瑚ちゃんの必死な声が耳に届く。俺はそんな珊瑚ちゃんに手を伸ばそうと──痛っ。
左手に力が入らない。あぁ、そっか。さっきこれで防いだんだった。折れてるか、それともひびくらいは入ってるかも。
改めて右手を伸ばし、倒れている俺の顔を覗き込んでいる珊瑚ちゃんの顔に触れる。
「ごめ、ん……」
意識が抜ける。もう耳にもなにも届かない。身体に力が入らない。あぁ、意識を失うのってこういう感覚なんだなぁ……。
◇◆◇
《珊瑚視点》
入学式の日。さくらがいつもと違うことに気づいた。そのときはさくらも変わろうとしているのかなぁ、ってくらいで特に気には止めてなかった。
明らかにさくらじゃないと気づいたのは、クラスメートと雛乃ちゃんのことで揉めたとき。
さくらがはっきりと、強い口調で言い返した。さくらは人に対してあまり強い言葉を言える子ではない。
これは中学一年生の時にいじめられてからずっとだ。極力静かに、波風を立てず、敵を作らないように保身をしている。
もちろん悪いことではない。あたしも今度こそはさくらに何かあったときは守ると心に誓っているが、それでもそんなことが起きないのが一番だ。
そして、今。
あたしは目の前で起きたことに理解が追い付かなかった。
目の前で殴られるさくらに対しあたしはなにも出来なかった。守るどころか守られてしまった。
例えそれが、本当のさくらであろうとなかろうと。身体はさくらのもので、あたしはさくらのことを巻き込んだ。
さくらの中に誰がいるのかはわからないけど、悪い人ではないことはわかる。一ヶ月も一緒に過ごしてきたのだ。
雛乃ちゃんのときも、そしてさっきも。
友達のために、あたしのために本気で怒っていた。
だからこそあたしも、今まで追求してこなかった。さくらがさくらではないと分かっていても、さくらとして接してきた。
どういう状況でこんなことになったのかはわからないけど、多分一番理解できていないのはさくらの中に入った本人だと思うし。
それに必死にさくらとして、あたしたちのことを大切にしようとしていることが伝わってきたから。
と、頭では色々考えていても口から出てくるのはさくらの名前だけ。あたしはただ、必死にさくらの名前を呼ぶことしか出来なかった。
するとさくらからあたしの顔に手が伸びてきて……。
「ごめ、ん……」
どうしてあなたが謝るの? 巻き込んだのはあたしなのに……。
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