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第七話 『今から採寸しちゃおっか?』
「──というわけ」
俺たちは部室に戻り、乃愛ちゃんが神崎愛斗に先程までの出来事を語った。
「つまり、ルナ戦記のコスプレで芹沢先生を納得させればいいってことだよね? 期限は三週間か」
「そういうこと。ルナ戦記の衣装ってあんた前つくってたよね?」
「うん、主要キャラは大体。サイズとか手直しするだけだし、三週間で間に合うと思う」
「おけおけ。じゃあ、みんなの採寸は私がするって感じで、いつまでにあればいい?」
「できるだけ早い方がいいかな」
「うーん、じゃあ今から採寸しちゃおっか? これから予定ある子いる?」
乃愛ちゃんと神崎愛斗の二人の会話に入り込む余地などなく、俺たちはただ黙って聞いていた。そんな時に急に話を振られたものだから、俺たちは一瞬反応が遅れた。
少しの間を置き、俺たちは全員首を横に振った。
「じゃあ、ここで採寸しちゃうから……、ほら愛斗出てって」
「あいあーい」
「覗いちゃダメだからね?」
「しないってば、そんなこと」
そう言い残し、神崎愛斗は部屋を出ていく。
それを確認した乃愛ちゃんが、口を開いた。
「確認だけど、衣装を作るのは愛斗だから、今から測るもろもろのサイズとか愛斗が見ることになるけど、大丈夫? 嫌なら無理強いはしないから遠慮せず言ってね」
「あ、そっか……」
乃愛ちゃんが言った言葉に、珊瑚ちゃんが俯いて小さく呟いた。
「スリーサイズとか腕回りとか首回りとか足の長さとか肩幅とか。本当に色々測るし、それを男の人に見られたくないっていうのは普通のことだから。遠慮しないでね」
「大丈夫? 珊瑚ちゃん」
俺は、隣に立つ珊瑚ちゃんの耳元に、息を吹きかけるような小さな声で尋ねる。
「あ……うん。大丈夫。言われてみれば当たり前のことだけど、そんなこと考えてなかったからちょっとビックリしちゃって」
「二人とも大丈夫?」
俺たちが話しているのが見えたのだろう、乃愛ちゃんは俺と珊瑚ちゃんの二人に向けてそう尋ねた。
俺たちは首を縦に振る。
「そう、蛍ちゃんと雛乃も大丈夫?」
「うん」
「大丈夫です!」
二人とも勢いよく頷く。
「後からでもやっぱり嫌ってなったら、言ってね。じゃあまず服脱いでもらえるかな? 下着までで大丈夫だから」
みんな制服を脱ぎ始め、すぐに下着姿になる。
俺も下着姿になって、制服を畳む。ちょっと寒いな。
「なんだかちょっと恥ずかしいですねっ!」
「あはは、すぐに終わらせるからちょっと待っててね」
蛍ちゃんの言葉に乃愛ちゃんは笑いながら応える。そして乃愛ちゃんはメジャーを手にもって蛍ちゃんの方へと近づいていった。
「じゃあ、まずは蛍ちゃんから。両手をばんざいしてくれる?」
「はい!」
乃愛ちゃんが蛍ちゃんの胸にメジャーを巻き付けてく。それから、紙に記録をした。
「もう下ろして大丈夫だよ」
蛍ちゃんが腕を下ろしたのを確認し、次に腰にメジャーを巻く。
「んっ」
「ごめんね。こしょぐったいよね。すぐ終わるからね」
それから五分ほど蛍ちゃんの様々なところを測って、記録していく。
「ふー、蛍ちゃんの分はおしまい! お疲れ様。それにしてもバランスいい身体してるねぇ。憧れちゃう!」
「先輩おじさんみたい~」
「恥ずかしいですっ」
乃愛ちゃんはふふふ、と笑いながら次は雛乃ちゃんの方へと歩いていく。
「次は雛乃ね」
「いつでもいいよ? 先輩」
ハグをせがんでいるかのように両手を広げてにっこりと笑う雛乃ちゃん。
「はいはい、手はばんざいね」
「むー」
乃愛ちゃんは、軽くあしらわれ膨れっ面をしている雛乃ちゃんの後ろから、胸にメジャーを巻き付ける。
蛍ちゃんの時と同様の手順で採寸を進め、そして終えた。
「雛乃は相変わらず細いね~。ちゃんとごはん食べなきゃダメだよ?」
「えー、じゃあ先輩が作ってくれたらいっぱい食べる!」
「気が向いたらね」
「え!? ほんとに!?」
乃愛ちゃんはほんとほんとー、と言いながら今度は珊瑚ちゃんの前に立つ。
「はい、珊瑚ちゃんばんざーい」
「は、はい!」
頬を赤く染め、少し恥ずかしそうに両手を掲げる珊瑚ちゃん。そんな様子を俺は眺めていると、珊瑚ちゃんと目が合い、照れ笑い。
かわいい! これぞ幼馴染みの特権。いつまでも眺めていたいとは思うものの、そうはいかないので俺も微笑み返し、目をそらす。
しばらくすると珊瑚ちゃんの採寸も終わったようだ。
「珊瑚ちゃんはすごい脚長いし、顔も小さいからモデルさんみたい。どんなコスプレでも似合うよ!」
「ほんとですかっ⁉ それじゃあ、乃愛先輩みたいな衣装も似合いますか⁉」
「私よりも似合うんじゃないかな?」
「あたし、乃愛先輩みたいにかっこよくなりたくて」
「うれしいこと言ってくれるねぇ」
乃愛ちゃんはそう言って笑いながら俺の前まで歩いてくる。
「じゃあ最後はさくらちゃん。ごめんね。そんな恰好で待たせちゃって。すぐに終わらせるから」
「あ、いえ」
「じゃあ、ばんざーい」
俺はゆっくりと両手を上に挙げる。なんかこれ恥ずかしいな。
乃愛ちゃんが、後ろから俺の胸へメジャーを巻き付ける。
「やっぱおっきいねぇ。……えいっ」
「に”ゃ⁉」
「えへへー、やらか~い。バストは91っと」
乃愛ちゃんは俺の胸を人揉みし、何事もなかったかのように数値を記録する。
それから他の子たちと同様の手順で採寸を進めていった。時々こしょぐったくて変な声が出ちゃうときがあったけど、特に問題もなく採寸を終えた。
「さくらちゃんは引っ込むところはしっかり引っ込んでて、ほんとにいい身体してる!」
「あ、ありがとうございます……?」
「先輩またおっさん出てる~」
「この身体を前にしたら誰だってなるでしょ~」
俺は畳んでおいた制服に袖を通し始めると、目の前で乃愛ちゃんが服を脱ぎ始める。
「さくらちゃん、私の採寸お願いしていい?」
「あ、えっと大丈夫ですけど」
「ありがと」
「先輩、あたしが測りたーい」
「雛乃は絶対変なところ触るからやだー。あ、でもさくらちゃんは一回だけ触ってもいいよ? 私も触らせてもらったし」
「は、はい! がんばります?」
「ふふ、よろしくね。はい」
乃愛ちゃんは俺にメジャーを手渡し、後ろを向いた。
「さぁ、さくらちゃん。いつでもどうぞ」
乃愛ちゃんは両手を掲げ、俺を待つ。俺はゆっくりとそんな乃愛ちゃんへと近づいていく。
脇下から両手を差し込み、メジャーを巻き付ける。乃愛ちゃんの胸に触れないように慎重にゆっくりと巻き付ける。
やっとの思いで巻き付けることが出来、数値を確認しようとしていたら、乃愛ちゃんは俺のメジャーを持つ手に優しく触れる。
「もー、さくらちゃん。もっときつくしてくれないとちゃんと測れないよ?」
「は、はい……!」
メジャーを持つ手に力を込める。
俺はメジャーを先程よりもきつく巻き始め、そんな時、乃愛ちゃんの肌に手が触れた。
柔らか……! 自分な身体に触れた時とは少し違う感覚だ。なんというか肌が手に吸い付いて離さないような。
もっと触れていたいという本能と、理性が頭の中で喧嘩する。
頑張ってくれ……! 理性……!!
それから数分。なんとか耐えきり、バストを測り終えた。
その数値を記録し乃愛ちゃんにも報せる。
「ありがと! じゃあ、はい!」
「……?」
乃愛ちゃんは、両手を広げ俺に向き合う。そんな仕草に俺は首をかしげた。
「さっき私もさくらちゃんのおっぱい触ったからね。さくらちゃんも私のおっぱいさわっていいよ。あ、でもちょっとだけだからね?」
そういって乃愛ちゃんは俺の手を掴み、自らの胸へと導いた。
あぁ、さよなら理性……!
俺は恐る恐る乃愛ちゃんのおっぱいを揉み始めた。
女の子のおっぱいに始めて触る。指先から全身に幸福感が染み渡っていくようだ。
「どう?」
「や、柔らかくて……、えっと……その、気持ちいい? です」
「へへ、さくらちゃんのもすごい柔らかかったよ?」
「あ、ありがとうございます……」
「はい、ここまで。採寸の続きしよっか」
俺は乃愛ちゃんの胸から手を離し、再びメジャーを手に取る。
それから乃愛ちゃんの倍以上の時間をかけて採寸を終えた。その間もなんだか頭はふわふわしていて、今でも指があの柔らかい感触を忘れさせてくれない。
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