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「それで、ある時、テスト前に教室に筆箱を忘れて、取りにいったときがあったんだ。それで取りにいった時、クラスの数名が残ってて、俺の話をしてた。」
私は、それに黙って耳を傾ける。
「みんな、俺のこと怖い、無理、性格悪いとか、散々に言われてた。どんなに聞きなれててもさ、辛い訳じゃん。逃げようと思った。筆箱なんて忘れて。でもそのとき、一人の女子が言ったんだよ。あの人そんな人じゃないと思う。実際はただの不器用な人なんだと思うって、そう言ってた。あっ、道どっち?」
「あっ、こっち。」
私は、そう言って、分かれ道の左側を指す。
「よかった。一緒だわ。」
君はそう言って、私と同じく左に曲がると話を続ける。
「俺さ、その子と関わったのたった一回だけだった。たった一回、授業のときに助けてやっただけ。それだけなのに、その子はその一回で俺のことわかってくれた。信じてくれた。それからその子のおかげで、友達も増えて本当に嬉しかった。……ありがとう、野原。」
「……どういたしまして。」
お礼を言いたいのは、私だよ。君にとってはたったの一回でも、私は本当に助けてくれて嬉しかった。本当の本当に。
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