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第2話 3人暮らしになりました
『ピーンポーン』
ご主人様の布団の匂いを嗅ぎながらゴロゴロしていると、インターホンが鳴る。
時刻は9:15。
来客にしては少し遅い時間。
忍足で近づきながらドアスコープを覗くと見知った顔と見知らぬ顔があった。
少しの心を躍らせながら扉を開ける。
「...どちら様ですか?」と、内心とは異なる対応をする私。
「...っと...ご主人様ですよ?...たった1ヶ月で俺の顔を忘れちゃったのか?」
「2週間程度と言ったと思いますけど?」
「まぁ...少し長引いちゃったのは悪いと思ってる」
「じゃあ、その連絡を入れなかったのはどう思います?」
「それも...悪いと思ってる」
「...はぁ。それでその子は誰ですか?」と、俺の横に立つ美しい女の子を指さす。
「...リヴ・シルクリフ」
「お綺麗な方ですけど、もしかしてどこかの王女様ですか?」
「...いや...その...魔王の娘...的な?」
「...はぁ?」
「ふんっ」と、そっぽを向く他魔王の娘。
「...それで?なんで魔王の娘さんを家に連れてきたんですか?」
「...まぁ...一緒に住むことになったというか...」
「...はい?この2LDKの家に3人で住むということですか?それとも私を追い出すということですか?」
「前者でございます...」
「...それも私に相談なくということですね」
「...返す言葉もありません」
「あの最強魔法使いがメイドに叱られてるなんて、無様ね」と、茶々を入れてくる魔王の娘。
「...はぁ。わかりました。近所の目も有りますから、とりあえず中に入ってください」
「...面目ない」
そうして、改めてメイドである、シュナ・ランベールに事情を説明する。
「事情は分かりました。...それではまず、お部屋はどうするんですか?」
「ウチは人間と一緒の部屋なんて絶対嫌。こんなボロ屋で生活するのさえすっごいストレスなのに...」
「ワガママですね。新参者の割に」
「...あなた、誰にそんな口聞いてるの?」と、お互いに睨み合う。
「ストップ。リヴ、この子は俺の家族だ。そしてリヴもな。だから、家族同士の言い合い程度ならまだしも、マジギレは禁止だから」
「...ウチは家族なんて認めない。...もういい。疲れたし寝る」と、そのままシュナの部屋に勝手に入っていくリヴ。
「...私の部屋無くなったんですけど」
「じゃあ...一緒に「ダメです。ご主人様はソファで寝てください」
「...俺結構疲れてんだけどなー...」
「この1ヶ月間、誰が学園への報告や、家のことをやっていたと思いますか?」
「...はい。そもそも一緒に寝るとか冗談だし...。じゃあ、俺はソファで寝るから...」と、トボトボソファにダイブするご主人様。
「...布団は貸してあげます」と、使われていなかった布団を投げる。
「...おう」
「それではおやすみなさい」
「...おう。おやすみ」
ご主人様の部屋に入る。
...危なかった。
ご主人様が居なくなってから2週間ほど経った頃から、帰ってこないご主人様を思い、ご主人様のベッドで寝ることが癖になっていた。
もし、今日ご主人様がこのベッドで寝ていたら...きっと私の匂いがついていることに気づいただろう。
そんなことになったら...。
...本当...帰ってくるなら帰ってくるって言ってよ...。どれだけ...心配したか。
「...馬鹿」
『お前さんは本当に素直じゃないニャ〜』という声が脳内に響いた気がしたが、そんな声を無視して静かに眠るのだった。
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