第6章 革命の夜

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第6章 革命の夜

 わたしは、一刻も早く故郷クロフクロスト王国に戻りたかった。  一族のみなが心配でいてもたってもいられない。  けれど、ロクは、何かと理由をつけてはのらりくらりとわたしの帰国を引き伸ばそうとしていた。  それでも、わたしは、毎日、王城にあるロクの執務室に押し掛けてはロクに帰りたいと訴えた。  そのたび、ロクは、美しい眉を下げて困ったようにわたしを見つめた。  「今は、だめだ、クロト。まだ、ここからクロフクロスト王国まで行くことはできない」  ロクが言うには、このランナクルス王国からクロフクロスト王国へ行くには、オルナルト山脈という険しい山を越えなくてはいけないらしい。  だが、この時期のオルナルト山脈には、イグル-という巨大な鳥の魔物たちがいるのだという。  イグル-は、普段、オルナルト山脈より北の山地で暮らしているがこの時期は、子育てのためにオルナルト山脈に集まってくる。  「子育て中のイグル-は、特に危険だ。今、オルナルト山脈は、越えられない」  「では、いつまで待てばいいの?」  わたしが問うとロクが少し考えてから答える。  「少なくとも半年は」  「半年?」  それじゃ、遅すぎる!  わたしは、ロクにつめよった。  「転移の術があるでしょ?」  「転移の術では、君一人しか連れていけない。危険すぎるだろう?」  「わたし一人で十分です!どうか、わたしをクロフクロスト王国へ連れていってください!」  「クロト」  ロクがはぁっと深いため息をつく。  「君は、もう、わたしの婚約者なんだよ?つまり未来の王妃だ。そんな君を一人で危険な場所に行かせることなんてできるわけがないだろう」  はい?  わたしは、驚きで目が丸くなった。  わたしがロクの婚約者?  確かに。  ロクは、わたしに優しくしてくれて。  隙あらば愛を囁いてくるし。  でも。  わたしたち、婚約者だったの?  「わたしは、あなたと婚約した覚えはありません」  「つれないな」  ロクが寂しげに微笑んだ。  「危ないところを助けて、家に連れてきて一緒に暮らしているのに」  「それは・・」  わたしは、口ごもった。  「でも!正式には、婚約したわけではないし、その、わたしたちの間にあるのは、『強欲』の悪魔との契約だけなのでは?」  「そうだね」  ロクは、立ち上がるとわたしの方へと歩み寄ってきた。  わたしの前に立つとロクは、わたしをじっとその金色の瞳で見つめる。  「私たちの間には、何よりも強い絆があるわけだ」  
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