エピローグ

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 ミリアは、ルシアス・ファシスタスと取引したのだ。  その力を手放すことと引き換えに、たった一夜。  『強欲』の呪いから解放されることを。  ミリアは、その夜、愛する男のもとを訪ねた。  ニモネに頼んで作ってもらった白い花嫁衣装に身を包んだミリアは、愛する邪神のもとを訪ねたのだ。  ミリアは、彼が他の二人の少女たちを妻にめとって以来、身を隠していた。  突然、戻ってきたミリアに男は、驚きと喜びを隠せなかった。  解放されたルシアス・ファシスタスの力によってミリアと邪神の会瀬を知るものはなく、二人は、誰からも隠されて結ばれた。  たった一夜の婚姻。  それでも二人には、十分だった。  「愛している」  ミリアは、邪神の腕の中で囁いた。  「これまでも、これからも」  ずっと。  邪神は、ミリアに応じた。  「愛している。私のたった一人の人」  ルシアス・ファシスタスの結界によって守られて二人は、愛し合ったのだ。  それは、奇跡ともいえる一夜だった。  夜が終わると、ミリアは、邪神のもとを去った。  そして。  二人が会うことはもう二度とはなかった。    戻ってきたミリアに『強欲』の悪魔は、目を細めた。  ミリアは。  一夜の内にまったく別の女になっていた。  「ルシアス・ファシスタス、か」  『強欲』の悪魔は、牙をむいで唸った。  だが。  時はすでに遅し。  ルシアス・ファシスタスは、すでにこの世界から消え去っていた。    力を失ったミリアをそれでも『強欲』は、離さなかった。  それは、『強欲』の最初で最後の執着だった。  「お前は、子を産む」  『強欲』は、ミリアに告げた。  「それは、私の子だ」  『強欲』は、にやりと笑った。  「他の誰の子でもない。この『強欲』の子なのだ」  それでもミリアは、よかった。  この子供たちを産む。  それは、ミリアの望み。  そうして。  ミリアは、すべての魔族の祖となる子供たちをこの世に産み落としたのだ。  ミリアの子供たちは、増え拡がり。  やがて、集落を作り、国を創った。  ミリアは、子供たちの行く末を見届けることはなかった。  人であるミリアは、やがて年老いて死んでいくから。  しかし。  『強欲』は、老いていく彼女の傍らに常にあって、彼女を見守り続けた。  『強欲』は。  彼女を愛していたのだろうか?  いえることは、一つだけ。  『強欲』がミリアの死と共にその生を終えたということ。  それだけ。  それだけの話。
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