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「錬金術師が武具や魔道具を?」
親方は、呻いた。
「それは、鍛冶屋の仕事じゃないのか?」
「鍛冶屋は、別にいましたけど、錬金術師もそういったものを作ります。あとは、時々、装飾品も作ってました」
「そうか」
親方は、ため息をつく。
「どうやらお前には、錬金術の初歩から教える必要があるようだな」
親方は、複雑な装置の置かれた机の方へとわたしを導くとテーブルに置かれた数種類の薬草を示した。
「これは、とある貴族の奥方に頼まれて作っている薬だ。この奥方は、季節の病がひどくってな。なんでも春になると肌が荒れて困るらしい」
言いながら親方は、薬草を錬成器に入れて錬成を始めた。
「こうして薬草から薬効のある部分を分離させ取り出す。そして、こっちの先に作っていた薬と合わせる」
錬成器の中がぽうっと青く輝く。
「こうすれば軟膏ができる」
「はい」
わたしは、目を丸くして親方がしていることを見つめていた。
錬金術で薬を作る?
クロフクロスト王国では、薬は、薬師か聖女しか作らない。
驚いているわたしに親方は、言った。
「やってみせろ」
「でも・・」
言いよどんでいるわたしに親方は、告げた。
「もし、できなければお前は、弟子にはできん」
わたしは、仕方なく無理もとでやってみることにした。
錬成器の中に薬草を入れ気を注ぎ込む。
薬草の薬効の部分を分離させるイメージをする。
「なんだって?」
親方が驚愕したような声をあげる。
わたしは、わけもわからないままに軟膏を作っていった。
出来上がった軟膏は、親方が作ったものと比べると少し色が違う?
わたしが作った軟膏は、淡い金色に輝いている。
「これは・・」
親方が小刀でちょっと指先を傷つけるとそこにわたしが作った軟膏を塗りつけた。
血が滲んでいた傷が一瞬のうちに消える。
「これは、ただの軟膏じゃない。特別製の軟膏だな。というかポーション?」
親方が首を傾げる。
「なんでこの材料でポーションが?」
はい?
わたしは、ひきつった笑いを浮かべて親方を見ていた。
何が起こっているの?
親方は、わたしに何度か軟膏を作らせたが、何回錬成してもそれは、ポーション的な軟膏になった。
どういうこと?
「お前、スキルは?」
「錬金術しか持っていません」
わたしが答えると、親方は、疑うような眼差しをむけてきた。
「錬金術だけ?本当なのか?」
「そうですよ」
わたしが頷くと、親方は、考え込んだ。
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