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「ほんとにこんなことが必要なの?」
わたしは、ぶつぶつ文句を言いながら冒険者ギルドのカウンターに並んでいた。
サリも苦笑している。
あの後、親方の命令でわたしは、登録のために冒険者ギルドを訪れていた。
ランナクルス王国では、冒険者ギルドに登録するさいにそれぞれのスキルを調べてくれるのだ。
まあ、わたしも近いうちには来ようと思っていたことだし。
そうしてわたしの番がくると受付のお姉さんがわたしにカウンターに置かれた水晶玉に手を置くようにと促した。
「こんなことしても、どうせ・・」
言いながらわたしが手を置くと、水晶玉は、キラキラと金色に輝き始めた。
「はぇ?」
「これは!」
冒険者ギルドの受付のお姉さんが慌てた様子で奥へと駆け込む。
わたしは、ちらっとサリの方をみた。
サリは、ぽかんと口を開けていた。
「サリ?」
「は、はいっ!」
サリがはっと気づいてわたしを見つめた。
「これは・・おそらく、ですが」
サリがいいかけたとき奥からばたばたと大男がでてきた。
「マジかよ・・」
その大きな角が額から二本の黒い角のはえた黒髪の巨漢は、わたしをまじまじと見つめていたがすぐにカウンターから出てくるとわたしの前に跪く。
「はい?」
「聖女、だ・・」
誰かが呟く声がきこえて。
辺りにざわめきが拡がっていく。
「聖女が現れたんだ!」
「聖女ミリア様の再来だ!」
はいぃっ?
わたしが呆然としているとサリまでわたしの前に跪いた。
「まさか、クロト様が聖女だったとは。失礼の数々お許しください!」
いや。
わたしは、困惑していた。
サリに失礼なことなんてされてないし。
それに。
わたしのスキルは、錬金術だけだった筈なのに、なんで?
「静まれ!」
突然、声が聞こえてみなが振り向いた。
そこには、騎士団の団員の制服を身に付けたロクが立っていた。
「ロク?」
「ロクザナ-ル様?」
サリが慌てて立ち上がって騎士の礼をとる。
ロクは、人々の間を掻き分けながらわたしの方へと進んでくるとわたしの手をとった。
「いくよ、クロト」
「ロク?」
ロクは、わたしを抱き寄せるとその場から転移した。
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