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もともとクロフクロスト王国の王族であるエルフたちは、魔女ミリアの血族であるエルダー家つまりゴブリンをよくは思っていなかった。
だからこそのキースとわたしの婚約だったのだ。
エルフとゴブリンの和解。
その象徴がわたしたちだった。
「しかし、ゴブリンとエルフの和解をよく思わない人々もいた」
ロクは、わたしを花に囲まれたあずまやに置かれたソファに座らせると隣に腰掛けわたしを抱きよせた。
「それは、ほかでもないエルフたち自身だった。王の血筋が魔女の末裔の血で汚されるとか主張しているらしい。彼らは、君が聖女であったら困るんだよ。君との婚約を破棄することができなくなるからね」
わたしは、狂おしい花の香りの中で夢の中のような心地でロクの言葉をきいていた。
「だから、連中は、君が聖女であることを隠した。君との婚約を破棄しやすいように」
ロクは、わたしの髪を優しく撫でながら話続ける。
「これは、君に秘していたことだが・・」
ロクは、少し躊躇う素振りを見せながらも続けた。
「君との婚約破棄を理由にクロフクロスト王国ではゴブリンへの・・エルダー家への迫害が始まっている」
「迫害?」
わたしは、顔をあげるとロクのことを見た。ロクは、真剣な表情で頷く。
「ああ。君の一族の者は、みな捕らえられて殺されている」
「そ、そんな!」
わたしの脳裏に故郷のみんなの顔が浮かんだ。
父様、母様。
かわいい妹のアリサ。
村のみんな。
わたしは、怒りと悲しみで目の前が真っ暗になった。
どうして?
なぜ、魔女ミリアの血族だからといって迫害されなくてはいかないの?
ロクがそっとわたしの頬を撫でた。
「大丈夫だ。安心して、愛しい人」
ロクが優しく囁く。
「君の願いは、私の願い、だ。君の一族は、できるだけ私の手の者たちが逃している」
わたしがはっと顔を向けるとロクは、表情を少し曇らせた。
「だが、君の一族は、国外に逃れることを拒んでいる者が多い。クロフクロスト王国に残りエルフたちと戦うことを選ぶ者がたくさんいる。君のご家族も」
ああ!
わたしは、ロクに訴えた。
「お願い!わたしをクロフクロスト王国に戻して!」
わたしも。
戦わなくては!
みんなと。
ゴブリンの一族と共に!
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