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「もちろん」
ロクは、わたしの手の指に口づけを落とした。
「私の妃となるのは、君以外にはいない」
ロクの金色の瞳が上目使いにわたしを射ぬいた。
この悪魔は。
『強欲』
まさに、『強欲』の悪魔なのだ。
わたしは、声が震えないようにと祈った。
「わたしも、もちろんお受けしますわ、ロクザナ-ル、陛下」
ロクの表情がぱぁっと明るくなる。
ロクは、立ち上がるとわたしを力強く抱き締めた。
「ああ、夢のようだ。クロト、君が私の妻になってくれるなんて!」
わたしは、ロクの背に手を回すと彼のことを抱き締めた。
「わたしも・・」
幸せすぎて涙が溢れてくるのを止められない。
わたしは、泣きながらロクにしがみついていた。
「愛しているよ、クロト」
ロクの囁きが聞こえてわたしは、うっとりとしていた。
ごほん、とライナールが咳払いをして、わたしたちは、現実に引き戻された。
そうだ!
こんなこと、してる場合じゃなかった!
わたしは、ロクから体を離すとロクに頼んだ。
「ねぇ、ロク。わたしをクロフクロストの家族の元に戻して。必ず、あなたのもとに戻ってくるから」
「仕方がないな」
ロクは、嫌そうに頷く。
「ただし、条件がある」
はい?
わたしは、ロクを見上げた。
ロクは、わたしに告げた。
「君を一人で行かせることはできない。だから」
その言葉は、わたしを驚かせた。
「私も一緒に行こう」
「な、何を言ってるんですか!ロクザナ-ル様!」
ライナールを無視するかのようにロクは、笑って続ける。
「幸いにも反対する者もなく。そうだろう?ライナール」
ロクがライナールをじろりと睨むとライナールは、深いため息を漏らした。
そして。
こうなるとロクの行動は速い。
わたしは、動きやすいワンピースに着替えると身の回りのものをマジックバッグに詰め込み、すぐにロクの元へと駆けつけた。
ロクの自室に行くとそこにはサリとライナールもいた。
ロクは、普通のクロフクロスト王国の貴族風の服に身を包んでいた。
ロクは、わたしに手を伸ばした。
「さあ、行こうか、クロト」
「ええ」
わたしは、ロクの手をとった。
「信じられない!」
ライナールが悲壮な悲鳴のような声をあげる。
「一国の王たる者がこんな危険を自ら犯すなんて!これがばれたら、あなたが王位を追われるだけではすみませんよ!わかってるんですか?ロクザナ-ル様」
「わかっている」
ロクは、わたしを腕に抱くとにっと笑った。
「ばれなければ、いいのだ。そうだろう?ライナール」
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