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僕は警察官と共に清美さんの家へ向かった。あの手に何かあったらと思うと警察だけに任せておく事はできなかった。
「先生はここでお待ち下さい」
そう言って警察官2人がパトカーを降りた。僕だけが車内に残された。
警察官が玄関のチャイムに手をかけた時だった。
ガシャーン!!
家の中から何かが割れる音がした。
「小川さん、どうされましたか?」
警察官は家の中に声をかけた。しかし応答はない。その代わりに「キャー」という悲鳴が聞こえてきた。清美さんの声だ。それに続いて赤ん坊の悲痛な泣き声も響いてきた。
「警察です。開けてください」
警察官は玄関から声をかけた。何を悠長な事をやっているのだ。ここで手をこまねいている間に、また手に傷ができてしまうかもしれない。
僕はパトカーを飛び出した。警察官を押しのけ玄関を開けようとした。しかし鍵がかかっていた。何処かに開いている所はないかと他の入口を探した。庭の方へまわると大きな掃き出し窓があった。中を覗くと今まさに男が清美さんに向かって拳を振り上げていた。
「やめろ!」
僕はサッシのガラスを力いっぱい叩いた。その剣幕に今更ながら警察官が駆けつけてきた。
「小川さん、開けてください」
警察官の姿に気付いた男は当惑の表情を浮かべた。ハッと我に返り振り上げていた手を慌てて下ろした。その手には缶チューハイが握られていた。
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